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テニスPRESSBACK NUMBER
「うつ病と昨年1月に診断されて…」四大大会&五輪出場、伊藤竜馬が告白する”病状”と公表の理由「テニスは孤独なスポーツ。自分を責めてしまいやすいんです」
posted2023/01/29 17:02
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph by
Hiromasa Mano
「自分に起きたことは、誰にでも起きうることだと知って欲しい」。昨年1月、うつ病と診断された本人の告白と妻、医師の証言で、”他人事ではない”伊藤の身に起きていたことに迫る。(『Number Web』ノンフィクション 全2回の後編/前編も)
「典型的なうつ病パターンですね」
精神科医の川村則行氏は、自身の診療所に現れた時の伊藤竜馬の症状を、そのように表現した。
うつ病かどうかを血液で”測る”
うつ状態を訴える患者にも、実はさまざまなパターンがあるという。
一つには、「躁うつ病」。うつ病と躁うつ病では、治療法や処方する薬も大きく変わってくる。また、「不安障害」も、うつ病と似て非なるものだ。
さらには、「実際にかなり多いのは、ADHD(注意欠如・多動症)などの発達障害がまじっている人」だと、川村医師は続けた。もちろんADHDが原因で、うつの発症リスクを高めることもある。あるいは、本人にADHDとの自覚がなく、うつだと思い込んでいる場合もあるだろう。
いずれにしても正しい治療を行うには、症状を正しく見極める必要がある。その判断材料となるのが、問診票。そして、うつ病かどうかを測るバイオマーカーとして川村医師が用いているのが、血液中のPEA濃度である。
血液を見てわかった”典型的なうつ病パターン”
“バイオマーカー”とは、特定の疾患の有無等を見極めるうえで、指標となる生体内物質を指す。“PEA”は“リン酸エタノールアミン”の略で、血液中に存在する分子だ。川村医師は、長年に及ぶドイツや米国の研究機関との共同研究等を経て、PEAこそが、うつ病のバイオマーカーたりえるとの結論に至った。雑駁に言ってしまえば、血中のPEA値が一定数より低ければ、うつ病と診断可能ということである。
ただしPEAとうつ病は、鉄分と貧血のような直接的な因果関係にある訳ではない。川村医師によれば、「PEA濃度を測るのは、“お弁当の空箱”を数えるような作業」だという。