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テニスPRESSBACK NUMBER
「うつ病と昨年1月に診断されて…」四大大会&五輪出場、伊藤竜馬が告白する”病状”と公表の理由「テニスは孤独なスポーツ。自分を責めてしまいやすいんです」
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph byHiromasa Mano
posted2023/01/29 17:02
今季からはコーチングも行っている伊藤竜馬。今回「うつ病」を公表した本人にはテニス界へのある思いがあった…
そんな連絡が届いたのは、「そろそろ試合に出てみようかな」と思い始めた、4月末のことだった。送り主は、錦織圭。彼も含め多くの選手仲間たちが、伊藤の長い不在を心配していたのだ。
4月末に伊藤は、錦織に内山靖崇、添田豪(現在は日本代表監督)と会い、久々に食事を共にした。その席で伊藤は、うつと診断されたことを3選手に打ち明ける。さらには、「5月末にグアムで開幕するツアー下部大会に出場しようと思っている」とも告げた。
「みんな心配してくれていて。そろそろ試合に出るつもりだと言ったら、『それまだダメでしょ?』と止められたんです。でも最後は、『本当に気分転換で行くなら行っていいよ』みたいに言ってくれて。僕の性格上、やっぱり行きたくなることも、分かってくれていたんだと思います」
会食の様子を思いだし、伊藤は溶けそうなほど目じりを下げた。
試合中にイライラすることが増えた
「試合も全然してないし、負けてもしかたない」——そんな思いで向かったグアムでは、出場した最初の大会で、ベスト4の好成績を残す。
ただその後は、気持ちの浮き沈み……特に「試合中にイライラすることが増えた」とも言った。
帰国し川村医師に相談すると、恐らくは薬の効果だという。
「その時に飲んでいた薬は、気持ちを上げるためのものなので、イライラすることもあるそうなんです。先生には『奥さんや友達に当たりが強くない?』とかいろいろ聞かれたので、『普段は大丈夫ですが、試合中は結構イライラするときがあります』と答えたりしながら、薬も変えていきました」
「ガッツポーズがまったくない」再び訪れた変調
そのような服用薬の微調整や多少の浮き沈みがありながらも、9月頃までは、目に見えて回復に向かったという。テニスの戦績も着実に上がり、「順調に回復しているぞ」との期待も抱いた。
ところが10月に入った頃から、再び気持ちがふさぎ始める。練習をしていても、そして試合のコートに立っても、高揚感を感じられない。妻の美佳さんの目にも、「ポイントを取っても声を出したり、ガッツポーズをする場面がまったくない」と映るなど、変調は明らかだった。