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テニスPRESSBACK NUMBER
「うつ病と昨年1月に診断されて…」四大大会&五輪出場、伊藤竜馬が告白する”病状”と公表の理由「テニスは孤独なスポーツ。自分を責めてしまいやすいんです」
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph byHiromasa Mano
posted2023/01/29 17:02
今季からはコーチングも行っている伊藤竜馬。今回「うつ病」を公表した本人にはテニス界へのある思いがあった…
川村医師に相談すると、理由の一つは「冬季うつのメカニズムのためセロトニンが減っているのだろう」と告げられた。日照時間の減少などにより、この時期は誰しもうつ状態に陥る危険性があるという。
もう一つ、考えられた原因は、当時服用していた薬。その少し前から新たな薬を処方してもらっていたが、どうやらそれが合わなかったようだ。相談の末に以前の薬に戻したのは、10月末の全日本選手権の初戦勝利後。それほどに切迫した状態で、伊藤は大会を戦っていた。
薬を以前の物に戻し、室内で太陽光に近い光を浴びることができる“光療法”用ライトを活用したことで、その後は再び回復に向かったという。
そんな感じで、今に至っています
11月には、日本で開催された2つの国際大会に出場。テニスの状態は悪くなかったが、股関節と腹筋に痛みを覚えたため、予定していた最後の2大会は欠場した。
今シーズンの予定をすべて終えた後、伊藤は再び血液検査を受ける。川村医師の診断は、「一度寛解に達しているが、11月時点では再燃している」というものだった。
「そんな感じで、今に至っています」
伊藤はそう言うと、屈託のない笑みを広げた。
今年1月。伊藤の姿は、オーストラリアにあった。自身がケガで試合に出られないこともあり、ダニエル太郎のサポートメンバーとして、全豪オープンを含む3大会に同行したのだ。その後の予定は未定だが、今季は自らもプレーしつつ、求められれば他選手の力にもなりたいという。
自分のように思い悩む選手を、少しでも減らしたい
伊藤が今回、自らの病状を公にしたのは、「自分に起きたことは、誰にでも起きうることだと知って欲しい」と願ったからだ。
「テニスは個人競技で孤独なスポーツ。自分を追い込みすぎたり、責めてしまいやすいんです。だからこそ僕の経験を他の選手や、特にジュニアの選手に知って欲しい。それに保護者や指導者の人たちにも、こういうことがありえると知って欲しいんです」
昨今はテニス界のみならず、アスリートが抱える心の負荷に、注目が集まるようにはなった。ただその本質や、抜本的な問題点への理解が進んでいるとは、言い難いのが現状だろう。
「自分のように思い悩む選手を、少しでも減らしたい」
そのような願いを胸に、伊藤竜馬は指導者としての未来も見据えつつ、自身の心と向き合っている。
<「うつ」とわかるまで編とあわせてお読みください>
伊藤竜馬(いとう・たつま)
1988年5月18日、三重県生まれ。長尾谷高校在学中の2006年にプロ転向。2012年、すべての四大大会とロンドン五輪に出場。2013年全日本選手権を制覇、世界ランク最高位は60位。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。