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テニスPRESSBACK NUMBER
「うつ病と昨年1月に診断されて…」四大大会&五輪出場、伊藤竜馬が告白する”病状”と公表の理由「テニスは孤独なスポーツ。自分を責めてしまいやすいんです」
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph byHiromasa Mano
posted2023/01/29 17:02
今季からはコーチングも行っている伊藤竜馬。今回「うつ病」を公表した本人にはテニス界へのある思いがあった…
どういうことか。川村医師曰く、うつ病とは「脳の細胞が死ぬ病気」であり「生理学的な原因は、セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンの働きが減っていること」だ。これらの神経伝達物質はいずれも、快感や喜び、安心などの感情と強く関連する。
とはいえ脳内をのぞき込み、神経伝達物質を数えるのは不可能だ。ただ、それらの物質が消費された後に、“外(=血中)”に捨てられる“お弁当の空箱(=PEA)“なら、数えることができる。空箱の数が分かれば、消費されたお弁当本体の量も推測がつくだろう。
つまりここで大切なのは、一般的に“心の病”と言われるうつ病とは、実際には明確な脳の生理的変化だということ。PEAの数値は、その変化を知る手がかりである。
そしてPEA濃度を測った結果、伊藤竜馬は、「典型的なうつ病パターン」と診断されたということだ。
できるだけテニスから離れて違うことをしようと
うつ病の治療法は、「適度な運動」「光に当たる」などの生活習慣の改善がベースにあるが、基本的には投薬である。変化や治療の経過を見るには、100日ほどの単位が目安。「薬を飲み続けていれば、だいたい8カ月くらいで元気になる」のが、一般的なパターンだと川村医師は言った。
伊藤が川村医師の下を訪れたのが、2022年1月。そこからの4カ月間、彼は完全にコートを離れた。
「川村先生に血液検査してもらったことで、自分の状態が理解できた。5月末までは一切試合に出ずに、それこそできるだけテニスから離れて違うことをしようと思いました。例えばそれまで、僕、家族でのちょっとしたことも、あまりしてこなかったんですよ。なので気分転換に色んなところに行って、それこそ息子と接する時間も増やしました」
休養期間には親子3人で、「レゴランドにも行った」と笑う。その間も薬は飲み続け、徐々に回復するのも感じていた。
うつ病と診断されたことを3人の選手に打ち明ける
「たっちゃん(伊藤のニックネーム)、メンタル大丈夫?」