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箱根駅伝「12秒差に3人」の劇的レース…なぜ“史上最高の2区”になった? 青学大・近藤幸太郎「(中央大)吉居は、かわいい弟のようです」
posted2023/01/02 20:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Sports Nippon/AFLO
吉居大和の思い切りは、清々しかった。
田澤廉の冷静なレース運びは、さすがだった。
そして近藤幸太郎の追い上げには、しびれた。
これほど面白かった2区を、私は思い出せない。
学生長距離界を代表する3人のランナーが首位を争い、3人が持ち味を発揮したのだから。
いきなり“9秒差”田澤廉を抜いた吉居大和
序盤、見せたのは中央大学の吉居(3年)だった。
正直、吉居が2区に起用されたのは予想外だった。戦前、藤原正和監督は悪戯っぽくこう話していた。
「大和は1区から3区のどこかを走ることになります。他の学校の監督さんたちには、悩んでいただいて(笑)」
とはいえ、1区か3区が有力と見られていた。吉居の持つスピードが生きる区間だからだ。おそらく、他のメンバーとの兼ね合いもあったかとは思うが、藤原監督は「勝負手」を打ってきた。
それに吉居は応えた。駒澤とは9秒差でスタートすると、すぐさま田澤(4年)を抜いた。3キロ過ぎには明治をかわして先頭に立った。
吉居の魅力は、どんな時も恐れずに突っ込んで入れることだ。前回の1区でも「遅いなって感じたので、自分のペースで飛び出しました」と振り返るように、自分の感覚を信じて押していける選手だ。今回もそうだった。
「後半、坂が苦しいというのは分かってたんですけど、やっぱり、どうしても自分は(リズムを)つかみたいという気持ちがあったので、前半から積極的に行きました」
前を行くのが田澤だろうと、関係ない。今回も吉居の魅力が全開の序盤の走りだった。
“2人の留学生”に追いついた青学大・近藤幸太郎
そして中盤の主役は、青山学院大・近藤(4年)だった。
9.2km地点で、先行していた順天堂大の「世界のミウラ」こと、9月のダイヤモンドリーグ3000m障害で4位に入った三浦龍司に追いつき、さらには10km手前で創価大のムルワと山梨学院大のムルアに追いついたのだ。