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箱根駅伝「12秒差に3人」の劇的レース…なぜ“史上最高の2区”になった? 青学大・近藤幸太郎「(中央大)吉居は、かわいい弟のようです」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph bySports Nippon/AFLO
posted2023/01/02 20:00
戸塚中継所で3区にたすきをつなぐ直前の中大2区・吉居大和(3年)と駒大2区・田澤廉(4年)
「あまり状態が良くないなかで、急ピッチで上げてきたんですが……。区間賞は目標にしてたんですが、結果としては届きませんでした。プランとしては前半、しっかり余裕を持っていって、権太坂の下りからそのままのペースで押そうと思っていたんですが、練習不足ということもあって、最後までそのペースを継続した走りが出来ませんでした」
11月の全日本のあと、本来であれば10000mの記録を狙って八王子ロングディスタンスか日体大記録会に出場する予定だったはずだが、走らなかったことから、決して順調ではないことが想像できた。
その状態のなかで、並びかけてきた吉居に対して意地を張ることなく、冷静にレースを運んだ田澤のマネージメント力は、学生の中では図抜けていた。
「吉居は、かわいい弟のような存在です」
3人のタイムは、わずか12秒の中に納まった。
吉居、1時間6分22秒。
近藤、1時間6分24秒。
田澤 1時間6分34秒。
近藤と田澤は、駅伝では今回が5度目の対決だったが、初めて近藤が区間記録で上回った。箱根駅伝の前、近藤は田澤とのライバル関係についてこう話してくれていた。
「煽らなくていいです(笑)。ただ、全日本の時はだいぶ離されてしまって、見えない背中を追う展開になってしまいました。箱根では、並走出来たらいいですよね」
ふたりは並ぶように中継所に飛び込んだのだから、近藤にとっては願い通りの展開になった。しかし、総合順位では譲らなかった田澤には、意地を感じた。
そして走り終えた近藤と吉居は、ハグを交わした。
実は、ふたりは愛知県豊橋市にある「TTランナーズ」で、先輩と後輩の間柄である。近藤が話していた。
「吉居はいつまで経っても、かわいい弟のような存在です」
激戦を締めくくるのに、ふさわしいシーンだった。
2023年、箱根駅伝2区。
3人の主役による、史上最高の2区だった。
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