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「誰も責められるべきではない」リバティアイランドの死を悼む「目をキラキラさせ、カメラにポーズを…」取材者が見た“強く、愛らしい名牝”の素顔
posted2025/04/29 17:05

2023年、圧巻の強さで牝馬三冠を達成したリバティアイランド。全12戦で川田将雅が手綱をとった
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島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
JIJI PRESS
牝馬三冠馬リバティアイランド(父ドゥラメンテ、栗東・中内田充正厩舎)が、4月27日に香港のシャティン競馬場で行われたクイーンエリザベス2世カップ(GI、芝2000m)の直線で故障して競走を中止。予後不良となって天に召された。5歳の春。天寿と言うには早すぎる旅立ちだった。
誰も責められるべきではないアクシデント
リバティアイランドは、最後の直線、ラスト300m付近で失速。鞍上の川田将雅が下馬し、手綱を保持してその場にとどまり、鼻面に顔を寄せた。ゴーグルをしていたので窺い知れなかったが、泣いているように見えた。
すぐに関係者が駆け寄ってきて、周囲を黒い幕で目隠しされ、馬運車に乗せられた。
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左前脚の種子骨靭帯を断裂し、球節部の亜脱臼により球節部が地面についている状態だった。現地の獣医師から予後不良の診断を受け、安楽死の処置が施された。
サラブレッドが脚を骨折したり脱臼するなどして地面につけられず、残りの3本の脚で立つ状態になると、蹄に過度の負担がかかって蹄葉炎を発症する。重症化すると激しい痛みがあり、治癒の見込みは低い。また、自力で立ち上がったり横になったりできなくなると消化器系の疾患につながり、死に至ることが多い。そのため、安楽死の処置が取られるのである。
レース中の事故ではないが、蹄葉炎ではデルタブルースやウオッカ、消化器系の疾患では、リバティアイランドの父のドゥラメンテが急性大腸炎、ナリタブライアンが胃破裂で死亡している。
リバティアイランドが故障した原因は、結論から言うと、わからない。誰にも特定することができない、と言うべきか。中内田調教師をはじめ、デビュー前からともに過ごす陣営が丹念なケアをつづけ、香港の主催者による獣医師の厳格なチェックをクリアしてレースに臨んだ。また、すべてのレースに騎乗してきた川田は誰よりもこの馬の乗り味を知り尽くしており、わずかな異変をも見逃さない名手であることは言わずもがなだ。
ドバイから香港という臨戦過程がハードすぎたのでは、という声もあるようだが、2017年の秋華賞馬ディアドラは、5歳のとき、リバティ同様、ドバイ、香港と転戦し、その後も日本に戻らずイギリスに飛び、フランス、イギリス、アイルランドなどで走り、GIのナッソーステークスを勝っている。