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「クロップさんは何を?」選手から学んだ“世界の日常”…森保一はなぜ自らを“監督係”と呼ぶのか「決断と責任を取ること、あとは営業ですね」 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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posted2023/01/01 14:42

「クロップさんは何を?」選手から学んだ“世界の日常”…森保一はなぜ自らを“監督係”と呼ぶのか「決断と責任を取ること、あとは営業ですね」<Number Web> photograph by Walnix

4年半の戦いを振り返った森保一監督。日本サッカーでは初めての長期政権となる2026年W杯までの続投が決まった

――選手からの発信という部分では、6月シリーズの最終戦でチュニジアに0-3で敗れたあと、チーム内に危機感が生まれ、若い選手たちも積極的に意見を言うようになった、という証言があります。実際、9月シリーズではチームの雰囲気が変わっていました。森保さんは、チュニジア戦後のチームの雰囲気の変化、若い選手たちの意識の変化をどう感じられていたのでしょうか?

森保 チュニジア戦はホームゲームでしたし、もちろん勝ちたかったですけど、次に生かせるいい経験になりました。W杯出場国に負けたことで、本大会で勝ち進んでいくためには何をしなければならないのか、という意識をチームとして持てたと思います。

 若い選手たちの意識の変化については、オリンピック世代から彼らを見てきて、自己主張や自己表現能力がすごく備わっていると感じていたので、チュニジア戦後に大きく変わったとは思いません。代表チームにおける経験の浅い選手たちから、「このままではダメだ」という思いを言葉として聞けたのはすごく嬉しかったし、頼もしく感じました。その意識の変化がチュニジア戦だけで起こったとは思いませんが、ベテランだけでなく、すべての選手からそういう発言が出てくるようになったのは、チームにとってすごくいいことだったと思います。

――7月のE-1選手権では、選手たちのディスカッションにコーチングスタッフも加わるようになって、グループミーティングが行われるようになったと。あのあたりからコミュニケーションもより深まったのでしょうか?

森保 最終予選の最中から、少しずつ変わっていったと思います。チーム全体に伝えるのではなく、守備のグループ、攻撃のグループ、右サイド、左サイドと小グループに分かれて、個別にクリアに伝えることが進んでいったと思います。コーチから選手に戦術的なことを伝えてもらうだけでなく、チームがやろうとすることに対して選手はどう思っているのか、どういう感覚でいるのかを吸い上げて、よりチームを機能させるためのやり取りに変わっていきました。

「響く時期と響かない時期がある」

――以前、「同じことを伝えても、それが響く時期と響かない時期がある」とおっしゃっていましたね。

森保 2次予選までのフェーズ、最終予選に入ってからのフェーズ、W杯に入ってからのフェーズでは、ギアが違うというか。対戦相手のレベルが変われば、選手の考え方や感じ方も変わってきたところがあったので、その変化に我々も対応できるように、ということはコーチングスタッフと共有してきました。その変化に対応していくことは、我々スタッフが成長するチャンスでもある。なので、最適なことをできるようにしていこうと。

――4-3-3から4-2-3-1への変更や3バックの導入に関しても、選手たちから提案があったようですが。

森保 3バックに関しては最終予選のときから提案がありました。オマーンとの初戦を落としたあとに「3バックはやらないんですか」と言われたこともあります。4-2-3-1に戻すことに関しては、どちらかと言うと、こちらから提案しているんじゃないですかね。W杯での戦いを見据えたときにどうなのか、といった話はしましたし。でも、選手たちはどんどん提案してくれましたよ。そうしたオプションはかなり持っていたと思います。そのうえで、どのカードを使うのかは、コーチ陣と話し合いながら、状況を見て「よし、これやってみよう」と決めてきましたね。

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