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「クレイジージョブ? 代表監督は幸せな仕事」森保一が語った“続投”決定前の本音「批判は気にならないし、逃げ出したいと思ったこともない」
posted2023/01/01 14:40
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Walnix
――先日、ある日本人監督の方がこんなことを話していました。「日本代表監督になるのが目標だったけど、自分には無理だな」と。「あれだけ批判され、重圧が掛かって、一筋縄ではいかない選手たちを束ねたうえで、あの舞台で結果を引き寄せるなんて、自分にはできそうもない」と。
森保一(以下、森保/敬称略) でも、責任という意味ではクラブの監督も代表チームの監督も変わらないと思いますよ。クラブの監督だって、もちろん批判に晒されますし。
――でも、注目度や批判の量は全然違いますよね。
森保 違うんですかね……まあ、違いますね(笑)。でも批判も含めて、それだけサッカーに目を向けてもらえているということなので嬉しいですし、ファン層が広がればいいなと思っていて。もちろん、肯定的な意見を言ってもらいたいですけど(笑)、そこは見る人のサッカー観や価値観なので自由かなと。
ネット上には批判がたくさんあるかもしれませんが、それがすべてじゃない。肯定的な意見って、あまり出てこないですから。だから、まずは自分の周りのスタッフを信じ、日本サッカーのために一緒に戦ってくれる人たちの輪を信じていく。そこに目を向ければ、仲間がたくさんいるので批判は気になりませんでしたね。批判が気になる人は大変なんだろうな、と思いますけど、私はストレスを感じることなく仕事をさせてもらいました。代表監督は「クレイジージョブ」と言われますけど、私にとってはクレイジーではなく、幸せな仕事ですね。
唯一の“後悔”は、あのオマーン戦
――森保さんは「一喜一憂しないこと」がポリシーで、この4年半も感情の波が大きく揺れることはありませんでしたが、外に見せなかっただけで、心の中で「逃げ出したい」と思うことはなかったんですか?
森保 それはなかったですね。いつも落ち着いていますよ。日本代表が少しでも成長し、勝利することを考えて、自分のできることをやる。結果に関しては、神のみぞ知るではないですけど、ベストを尽くしたら、どんな結果になろうと受け入れようと。だから、後悔もないですし……ただ、唯一あったのがオマーン戦ですね。
――2021年9月に行われた、カタールW杯アジア最終予選の初戦ですね。
森保 あのときは初めて練習のクオリティが上がらなかったんです。オリンピックが終わったばかりで疲労の残る選手もいれば、「ワンチーム・ツーカテゴリー」ということでやってきましたけど、オリンピック組とA代表組で意思疎通を図れないところが少しあったり。欧州のプレシーズンに自チームの戦術を頭に叩き込んだばかりで、代表チームのやり方を忘れていたり、欧州の移籍市場が閉まる直前で、ホテルで代理人とずっと電話している選手がいたり……と、いろいろな要因があった。大丈夫かな、という気持ちで臨んだところがあって。
――そうしたら、案の定敗れてしまった。
森保 そのあとは、もちろん勝ったり負けたりしましたが、準備段階ではたとえ2日しかなくても最善の準備をしたので、結果はすべて受け入れるという心境になっていましたね。
――(ハリルホジッチ監督時代の)16年9月に行われたロシアW杯のアジア最終予選でも初戦を落としていますから、9月上旬の試合は本当に難しいんでしょうね。それは教訓にしていかなければならないですね。
森保 本当にそうだと思います。20年の9月はコロナ禍で代表活動ができなかったので、自分のなかでも難しさの記憶が飛んでいて。すごく反省しました。