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「頭蓋骨の厚さが常人の倍」マーク・ハントの“超人伝説”を本人に聞いてみたら…格闘技カメラマンが振り返る“愛すべき剛腕”の思い出 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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photograph bySusumu Nagao

posted2022/12/30 17:22

「頭蓋骨の厚さが常人の倍」マーク・ハントの“超人伝説”を本人に聞いてみたら…格闘技カメラマンが振り返る“愛すべき剛腕”の思い出<Number Web> photograph by Susumu Nagao

2014年、UFC日本大会のため来日したマーク・ハントを新宿のスナックで撮影。K-1、PRIDE、UFCで数々の名勝負を生み出したレジェンドだ

PRIDE消滅後、UFCヘビー級のトップファイターに

 ハントは2010年から闘う舞台をUFCに移すことになった。これはPRIDEのときの試合契約が残っていたためで、同団体を買収したUFCが彼に対して「試合はしなくてもいいので、契約に残っている試合のギャラを払う」と提案。これに対してハントは「それなら試合をしたい」と強く希望したという。UFCでのデビュー戦には敗れたが、次戦の2011年2月には約5年ぶりの勝利をKOで飾り、連敗を6でストップした。

 その後の彼の活躍は目覚ましく、ニュージーランド出身のハントにとっては地元とも呼べるオーストラリアや、かつての主戦場・日本ではメインイベントを任されるトップ選手に。UFCのヘビー級王者にも挑戦したほどだった。いまから4年前の2018年、44歳になった彼はUFCオーストラリア大会で敗戦。試合後にMMAからの引退を発表した。

 2020年からボクシングのリングに上がっていたハントは、先月(11月5日)にも試合をしている。結果は4ラウンドの逆転KO勝ちだったが、試合後のインタビューでついに格闘技からの引退を表明した。「サモアの怪人」と呼ばれたハントも気がつけば48歳になり、自らの意思でグローブを置く決断をしたということなのだろうか。

トランクスを忘れ「今日の撮影はこれでいい?」

 私とハントの付き合いは、彼がK-1のオセアニア代表として来日した2000年からのことだから、足かけ20年以上になる。第一印象は、いつもニコニコしている陽気なサモア人。ただし、試合中だけは別人のように厳しくなる。初来日の翌年、並み居る強豪を撃破して2001年の『K-1 WORLD GP』を制覇したのだが、当時ハントは全くのノーマークだった。敗者復活戦を勝ち抜いた彼の名前が優勝候補にあがることはなく、メディア関係者の間でも決勝に進むと予想するものは誰もいなかった。

 しかしハントは準々決勝で大本命と目されたジェロム・レ・バンナからKO勝ちを奪い、その勢いのまま一気に頂点に立ってしまった。相手の打撃をすべて吸収するかのような圧倒的なタフネスに、バンナを失神させた強烈なパンチ力。それ以前にもレイ・セフォーとの激闘が格闘技ファンの間で話題を呼んでいたが、グランプリでの優勝を経て、一晩にして「マーク・ハント」の名前はライト層にまで轟くことになった。

【次ページ】 新宿のスナックで「クールだったよな、あの写真」

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マーク・ハント
ヴァンダレイ・シウバ
ミルコ・クロコップ
エメリヤーエンコ・ヒョードル
ジェロム・レ・バンナ
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