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「頭蓋骨の厚さが常人の倍」マーク・ハントの“超人伝説”を本人に聞いてみたら…格闘技カメラマンが振り返る“愛すべき剛腕”の思い出
posted2022/12/30 17:22
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph by
Susumu Nagao
大晦日に格闘技イベントが開催されるようになり、今年で23年目になる。故アントニオ猪木さんが2000年に大阪ドームでスタートさせたのが、その始まりだ。主催団体やイベント名称は変われども、これだけ長く継続し、世の中に定着するとは誰が想像できただろうか。
私もカメラマンとして、リングサイドで数々の名勝負、名場面を撮影してきた。エメリヤーエンコ・ヒョードルvs.アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、吉田秀彦vs.小川直也、フロイド・メイウェザー・ジュニアvs.那須川天心、五味隆典のスカ勝ち、中指を立てた青木真也……。どの試合であろうが、その情景は今でも鮮明に覚えている。
その中でも、とりわけ印象に残っている一戦がある。『PRIDE 男祭り2004』で行われたマーク・ハントとヴァンダレイ・シウバの試合だ。
ハントとシウバが繰り広げた「バチバチの打撃戦」
シウバは1999年にPRIDEのリングに登場して以来、引き分けと無効試合を挟み17連勝中。ミドル級(93kg以下)の「絶対王者」と呼ばれ、PRIDEを象徴する選手のひとりだった。
一方のハントは、2000年に当時絶大な人気を誇っていたK-1の舞台に立つと、翌年の『K-1 WORLD GP』で王者になるという快挙を成し遂げた。MMA(総合格闘技)は2004年6月から始めたばかりで、この試合が3戦目となる。過去2戦の内容を見る限り、いまだMMAのルールにアジャストしているとは言いがたかった。
シウバの当初の対戦相手は桜庭和志だったが、桜庭の怪我で試合の3日前にハントに変更された。両者には体重差が30キロ以上もあり、現在のMMAの試合では認められないマッチメイクである。ミドル級が主戦場とはいえ百戦錬磨のシウバと、総合デビューまもないハントの試合は大いに注目された。
ともに打撃を得意とするタイプだけに、典型的なストライカー同士の試合となった。序盤こそハントのパワーを警戒してシウバは慎重な立ち上がりを見せたが、両者の距離が近づくと、まさしく火花が飛び散るようなバチバチの打撃戦になる。ハントはシャープで正確なパンチを当て、ガードの上からでも効いているのがわかる。シウバは全身の筋肉をフルに使い、大ぶりなフックを振り回す。「シュッ! シュッ!」と空気を切り裂くようなハントと、「ブーン! ブーン!」という風圧を感じさせるシウバ。両者の打撃は対照的だった。