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「頭蓋骨の厚さが常人の倍」マーク・ハントの“超人伝説”を本人に聞いてみたら…格闘技カメラマンが振り返る“愛すべき剛腕”の思い出
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2022/12/30 17:22
2014年、UFC日本大会のため来日したマーク・ハントを新宿のスナックで撮影。K-1、PRIDE、UFCで数々の名勝負を生み出したレジェンドだ
ハントに比べて明らかに小さなシウバはこのままでは不利と判断。タックルから寝技を中心とした攻めを仕掛ける。寝技は立ち技に比べると体重差の影響を受けにくいからだ。シウバがテイクダウンを決め、上になってアームロックやマウントパンチで攻め込むのだが、そのつどハントが俊敏な動きで対応する。ハントはパワーで強引に体勢を入れ替え、試合をスタンド状態に戻す。試合までの準備期間が短く、MMA3戦目とは思えないハントの適応力は、満員のさいたまスーパーアリーナの観客を驚嘆させるに十分だった。
宙を舞ったハントが尻から落下し…
写真の撮れ高としては、1ラウンドにハントが相手を踏みつけにいったシーンをあげたい。ハントの巨体が宙を舞ったところに、グラウンドのシウバが足を使ってガードする。すると、ヒップアタックのような形で、ハントが尻からシウバの身体に落下した。もちろん真剣勝負なのだが、なんともユーモラスで、お気に入りの一枚だ。
閑話休題、試合は3ラウンドでも決着が付かず判定になった。体重差をものともせず、諦めずにテイクダウンで上になり、パウンドで攻撃したシウバ。スタンドで何度もダウンを奪い、ダメージを与えたという観点ではハントが有利か。ジャッジのスコアは2-1と割れたが、ハントの勝利。判定のときの両者の表情が非常に対照的だった。「この判定はどういうことだ、自分の勝ちだ」と言わんばかりのシウバ。「随分と体重の重い俺が勝っちゃったよ、なんだか悪いねぇ」と相手を気遣うハント。試合結果はどうであれ、PRIDE史上に燦然と輝く階級を超えた激闘だった。
翌2005年の大晦日にもハントは試合を行った。対戦相手は同じくK-1出身のミルコ・クロコップだ。ミルコにはK-1ルールでは苦杯をなめさせられていたが、MMAルールで見事にリベンジに成功した。さらに2006年の大晦日には、人類最強と呼ばれたヒョードルの持つPRIDEヘビー級王座に挑戦したが、惜敗。この試合を境にハントの連敗が続く。2008年の大晦日は体重が軽く、格下と見られたメルヴィン・マヌーフと対戦。右フックからのパウンドを受け、わずか18秒でKO負けだった。これを最後に彼が大晦日に試合をすることはなかった。