濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“ガリガリで引きこもり”でも金星連発…スターダムのヒール“鹿島沙希だけの個性”「プロレスは、ギャンブルだから面白い」《特別グラビア》
text by

橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byShigeki Yamamoto
posted2022/12/29 11:03

必殺技「起死回生」を武器に、今年はリーグ戦の活躍でも話題を集めた鹿島沙希
岩谷麻優だけは「なんでも話せたし信頼していた」
人との接し方がよく分かんなくて、という鹿島が1人だけ「なんでも話せたし信頼していた」というのが“スターダムのアイコン”岩谷麻優だ。岩谷とはユニット「STARS」時代にタッグ王座も獲得している。
「結局、その岩谷麻優を裏切って大江戸隊に行くんですけど。それが大きかったですね。“引き立て役は嫌だ”ってSTARSを出たんですけど、いま思うと引き立てられてたのは自分なんですよ。やっぱり甘えてたんですかね。大江戸隊にきてから、自分なりに考えてプロレスをするようになりました」
素直にそう振り返ることができるのも、レスラーとしての成長ではないか。今後はシングルベルトもほしいし、同時に一歩引いたポジションで楽しくできてもいる。結果も出ている。
ADVERTISEMENT
「そのへんは悩ましいですね。でもあんまり先々のことは考えなくてもいいのかな。大事なのは今が一番楽しいってことで。そうなるためにいろいろ動いてきたので」
こうありたい、こうなりたいという理想像はあえて持たない。ただキャリアを重ねても、団体が大きくなっても、常に考えるのはファンのことだ。
誰とも違う、鹿島沙希だけの個性
「昔のスターダムはグッズ売店に選手が出て、大会で1000円のポートレートを買えば選手に会って、話ができて、写真も撮れたんですよ。今はコロナの影響もあるし会社が大きくなって、サイン会や撮影会はそれだけで(試合とは別の)イベントじゃないですか。試合もだけど写真とかサインにそれだけの価値があると思ってくれてるのは凄いなって。
ただ、そうなると来れない人もいますよね。お金もかかるから学生とか難しいかもしれないし。だからインスタのストーリーで質問コーナーやったり、インスタライブもしますね。そういうところで少しでもコミュニケーションが取れたらって。たまに調子に乗ったヤツがくるんで、そうなってきたらしばらくやらなくなったり(笑)。
プロレスラーになってなかったら味わえないことばかりですよ。こんな刺激ほかにない。試合自体もそうですけど応援されるっていうのも凄いこと。グッズを買ってくれるのも、私のためにお金を使ってくれてるわけですよね。普通じゃありえないですよ。言ったら赤の他人のために、ねぇ。“鹿島さんがボコボコにされても起死回生で勝ったのを見て勇気が出ました。僕も仕事頑張ります”みたいな声もあって。私が人に影響与えてるのかって思ったり」
プロレスをやってなかったら、髪や爪には一切お金をかけないし、家でジャージで暮らしているだろうと鹿島。今はその予定がないが、引退したら「その日のうちに荷物まとめて実家に帰ります」とも(いつか家族の役に立てればと介護の資格も取っている)。けれどリングに上がって、ファンに見られている時だけは細い体で、誰とも違う個性で“起死回生”の鮮やかなプロレスを体現していく。きっと鹿島沙希は誰よりも普通の感性を持っている。普通だからこそ、“超人”や“怪物”だらけのプロレス界で普通じゃない活躍ができるのだ。
(撮影=山元茂樹)
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。
