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白熱ラグビー早明戦…念願の“年越し”を決めた早稲田がいいチームに仕上がってきた!「少なくともあと1週間、このチームを見られる」
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生島淳Jun Ikushima
photograph bySankei Shimbun
posted2022/12/28 17:01

対抗戦で敗れた明治を競り勝ち、大学選手権4強入りを決めた早稲田。「昨年の方がタレントは上」と話す大田尾監督も、少しずつ手応えを感じ始めている
早稲田が2019年度に日本一になった時は、早明戦で大敗したあと、大学選手権準々決勝の日大戦から準決勝の天理大戦、そして決勝の明治との再戦へと驚異的なスピードで進化していった。
今季の早稲田は、決してワープ級のスピードで進化しているわけではないが、一戦一戦、実戦を通して強くなってきている。大田尾監督は12月に入ってからのチームの強化過程をこう話す。
「早明戦が終わって、翌週には大学選手権で東洋大と戦って、というのはかなりキツかったです。東洋さんは本物の強さを持ってましたし、ウチの選手もかなり痛みました。対抗戦が終わってからデザインしての3週間というよりも、がむしゃらに取り組んでの3週間でした」
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現状、チームの仕上がりとしては「7割くらい」のイメージだという。状況判断など、磨くべきところはいくらでもあると話す。準々決勝の明治戦、最後はヒヤヒヤする場面が訪れてしまったのも自ら招いたものだったという。
「6点リードして残り3分、しかも敵陣に入ってのマイボールでのアタック。シナリオとしては3点を取るのがベスト、あるいはドロップアウトで陣地を深く進めるとか、勝つ確率を高める方法があるわけです」
ところがアタックを継続し、反則を犯してしまう。そこからピンチを招いてしまったわけで、80分間、「適切な判断」が成されることがこれから必要となってくる。
大田尾監督「年を越せるのはうれしい」
昨季は明治に敗れて年を越せなかったが、今年はひとつ壁を超え、大田尾監督もジワリとした喜びがあるようだった。
「年を越せるのはうれしいです。この時期になると、学生はグングン伸びるんですね。正直、タレントは去年の方が上です。それでも、キャプテンの昌彦を中心にして、チームワークで成長している手ごたえはあります。少なくともあと1週間、このチームを見られるのはうれしいです」
秩父宮で見ていると、ゴール裏に陣取った早稲田の部員たちの声が聞こえる。激しいタックルが出ると、部員の声が響くのだが、この声が今年はよく響く。いいチームの証左である。
次の準決勝(1/2)の相手は京都産業大学だ。ウィングの14番、1年生のシオネ・ポルテレは爆発的な突破力を持ち、今すぐにでも南半球のスーパーラグビーでプレーしてもおかしくないほどの選手だ。
さて、早稲田はどんな対策を練るのか。そしてどんな成長を1週間で見せてくれるだろうか。
