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「おまえやんのかゴルァ!」172cmのデクラークはなぜ大男に立ち向かえるのか? “世界一の9番”が明かす、負けず嫌いの原点とは
posted2022/12/27 11:06
text by
朴鐘泰Park Jong Tae
photograph by
Miki Fukano
たしか、今年の4月上旬だったと思う。要約すると、「来季にデクラークが来るかも!?」というニュースが流れた。まだ初年度のリーグワンが終盤に差し掛かる頃で、気が早い話だなあ、と思いつつ、こうも決めた。「正式に決まったらすぐにインタビュー申し込もう」と。
何だかもう遠い昔話のようにも思える2019年ラグビーW杯・日本大会で最も印象に残った選手が、優勝した南アフリカの9番だった。
忘れもしない準々決勝の南アフリカ対日本戦。日本は前半を3-5で折り返した。「これはいけるかも、ここからだ!」と、スタンドで前のめりになりながら後半の戦況を眺めていると、日本のペナルティーから南アフリカの10番が1本、1本、また1本と着実にペナルティーゴールを決め、点差は3-14に広がった。ほんの少し前までの勝手な超ポジティブマインドは「これはやばい、かなりやばいかも……」と、どんどん翳り出した。
そして66分。南アフリカのモールから抜け出したフッカーのパスを受けた9番が、もうトライ目前。それを阻止しようとタックルに来た福岡堅樹に、「おまえどけぇこらぁ!」と言わんばかりの強烈なハンドオフを見舞った。トライもゴールも決まって、スコアは3-21。「ダメだ……」とポキッと心が折れたのをはっきり覚えている。
衝撃の乱闘「おまえやんのかゴルァ!」
続く、準決勝の南アフリカ対ウェールズ戦。正直、試合展開の詳細は覚えていない。しかし、あるシーンが頭にこびりついて離れない。
ラインアウトからウェールズの9番がショートサイドに走り込むと、南アフリカの9番は弾丸のようなタックルを見舞い、タッチラインの外に押し出した。まだウェールズの9番が持っているボールを、「とっととよこせ!」と南アの9番が詰め寄る。
そこから両軍入り乱れた、ほんのちょっとした小競り合いになるのだが、仲裁に入ってきたウェールズの4番(あとで調べたら身長197cm)の胸ぐらをつかんだ南アフリカの9番は、さらに笑いながら睨みつけたのだ。
何とも威勢のいいハーフだなあ、なんて微笑ましく観ていたのだが、あとでそのシーンの写真を確かめると、わずか172cmの9番が2m近いロックに向かって、「おまえやんのかゴルァ!」と言わんばかりに、本気で突っかかっていたのだ。しかも笑いながら。
常に負けず嫌いで、勝ち気で、強気じゃなきゃスクラムハーフは務まらないと言われる。でも、ここまで清々しいほど負けず嫌いで、誰よりも勝ち気で、強烈に強気すぎる9番は初めて観た。その背景には一体何があるんだろう?
2年目のリーグワンを迎える横浜キヤノンイーグルスに加入した世界一のスクラムハーフ、ファフ・デクラーク本人に確かめる機会が巡ってきた。