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「日本には知性が欠けていた」悔しさを滲ませつつもトルシエがコスタリカ戦を辛口総括「前半はまるでトレーニングマッチ」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byMiki Fukano
posted2022/11/30 17:03
言葉は相変わらず辛辣でも、トルシエは敗戦を本当に残念そうにしていた
日本の問題は攻撃だった。攻撃面で森保(一)が投入したのは優れた選手たちだったが、チームは攻撃の組織を欠いていた。相手を崩せるだけのコレクティブな構築もなかった。スペインのような組織の流動性を欠いていた。相手を崩すための確固とした攻撃の形もなかった。それぞれが個人技に走り、自分のプレーにこだわり過ぎた。堂安は幾度となくボールを失い、伊東(純也)もドイツ戦の精彩を欠いた。チームにコレクティブな要素は何もなかった。
——その点では今日は鎌田もゲームメイカーとしては効果的ではありませんでした。
トルシエ その通りで、彼は攻め急いでいた。彼だけではなくすべての選手がそうで、トライアングルを作ることを忘れていた。コンビネーションによる崩しが頭になかった。ワンタッチコントロールがないからプレーのスピードも欠いた。
日本のプレー自体が急ぎ過ぎで、時間がたつにつれてその傾向は強まっていった。戦術的なディシプリンも不十分で、それぞれが自分勝手にプレーしていた。相馬(勇紀)は左でプレーしたかと思えば右に移動し、伊東もサイドでプレーしたり中に入ったりで、攻撃の厳格さや規律が何もなかった。
——それでも試合の終盤には三笘が何度かチャンスを作り出しました。
トルシエ もちろんそうしたことはあった。三笘は左サイドで試合にうまく入っていったが、全体として見たときに攻撃の戦術的ディシプリンや構築を欠いていた。
チームは十分に成熟していなかった
——しかし構築の欠如は、6月や9月の試合でも見られました。このときも森保監督はターンオーバーを敢行して、ブラジル戦やアメリカ戦の次の試合で弱点を露呈しました。森保監督自身はターンオーバーに手ごたえを感じていましたが、今回も成功したとは言い難かったです。
トルシエ 彼は大胆に5人の選手を入れ替えた。5人はフレッシュな状態だったが明らかに経験を欠いた。相馬はそれなりに優れた選手だが国際レベルとはいいがたく、このような試合では南野のような経験のある選手を起用すべきだった。上田もいいものは持ってはいるが若く、相手のプレッシャーに苦しんでいた。
この重要な試合に臨むにあたり、チームは十分に成熟していなかった。それでも森保は50%の変更を加えた。選手には強い意志も野心もあったが、残念ながら彼らは規律を欠いていた。プレーは無配慮かつ気まぐれだった。必要なのは経験であり知性だったが、日本にはその知性が欠けていた。
——あなたは以前からコスタリカ戦では絶対的に勝利が必要だからベストメンバーで臨むべきだと述べていました。しかし森保監督はターンオーバーを敢行し結果として敗れました。コスタリカが強かったから勝ったのではなく、日本が自ら進んで彼らに勝利をプレゼントしたとは言えないでしょうか?