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「そんなもん、こっちが指名しちまえ!」ドラフト会場に響いた大沢親分の“喝” 松坂、菅野、長野…日本ハム「強行指名」信念の原点
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2022/11/19 17:09
「意中の球団以外は社会人入り」を表明していた横浜高時代の松坂大輔。それでも指名に踏み切った日本ハムの思いとは…
後に日本ハムは、巨人と相思相愛だった長野久義を2006年に、同じく菅野智之を2011年に強行指名している。いずれも入団には至らなかったが、「その年の一番いい選手を指名する」という信念を貫き続けるとともに、ドラフトを巡る“暗黙の了解”に立ち向かい、問題提起し続けてきた。
「長野や菅野に関しても、もちろん闇雲に指名したわけじゃない。ある程度のものは掴んでゴーサインを出していますが、実らないこともある。ただ、指名する権利はあるのに、一部の球団による“暗黙の了解”を許すのか、という思いはあった。かつて逆指名制度で大変な思いをしてきて、それがやっとなくなってもなお、やられてしまうのか、と。正直、意地もありました」
ドラフトの“暗黙の了解”に立ち向かった信念
04年の北海道移転を機に注目度が上がり、ドラフト戦略と育成プランが実って日本ハムは強くなった。ダルビッシュ有、大谷翔平ら日本を代表するスーパースターも輩出。信念を貫き、時にセンセーショナルに風穴を開けながらも積み上げてきた実績が、「不人気球団」の印象を変えた。
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「スカウティングと育成で勝つ、というチームの方針が今、アマチュア界でとても好意的に受け入れられているのを感じます。最近では“日本ハムは嫌です”という反応は聞いたことがない。本当に嬉しいことですね」
78歳、スカウト顧問として今なおチームの強化に携わる思いは――。
「人生のなかで僕らと縁があって、日本ハムに入って人生が変わったという選手が一人でも多く出てくればいいな、という思いでやっています。スカウトとして一番大事にしているのは、目に見えない部分です。身長や球速、成績の数字だけではないところを追求していきたい。どれだけ経験を重ねてもまだまだ奥が深い。スカウトは本当に面白い仕事ですよ」
《#1、#2から続く》
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