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ヤクザから転身した“元祖・入れ墨ボクサー”は今…「引退後は俳優、24歳下の女優と結婚」大嶋宏成(50歳)が弟と振り返る激動の人生
posted2025/01/27 11:04
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph by
Shiro Miyake
極道の世界から転身した、少年院出身の入れ墨ボクサー。
井岡一翔のタトゥーが物議を醸したことは記憶に新しいが、今から28年前、特異な経歴を持つ青年のデビューは大々的に報じられた。メディアでイロモノ的に扱われ、その実力に懐疑的な視線も飛び交うなか、全日本新人王を獲得。デビューから破竹の11連勝で、その熱は加速した。
そんな兄の背中を2つ年の離れた弟は、羨望と焦燥が複雑に絡み合う心境で眺めていた。上半身には兄と同様に入れ墨が刻まれている。兄との違いは、足抜けのケジメとして右手小指を切り落としていることだった。
ボクシングに魅せられた不良兄弟
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師走の寒さが頬を差す週末、西武新宿線・上井草駅から徒歩で1分足らずの場所にある居酒屋「いきや」で元祖・入れ墨ボクサーとして名を馳せた兄弟が顔を合わせていた。
店の経営者は大嶋宏成(50歳)。今年でリングから降りて20年となる。引退後の6年間はアルコールに呑まれ、俳優業やトレーナーなどで生計を立てつつも鬱積した日々を過ごした。
弟の記胤(48歳)は、現役時代から15年ほど続けた介護職などを経て、現在は障害者の就労支援施設の責任者を任されている。
まばゆいスポットライトを浴びながら凋落を経験した兄と、兄のいた世界の“光”に希望を求めた弟。
共通していたのは、“入れ墨”という消しがたい過去に対しての捉え方でもあった。
「1ミリの後悔もないんです。入れ墨があったから注目を浴びれたし、だからこそ半端な真似は出来ないと重圧が力になった。ボクシングに出会わなければ、2人とも今ごろ、野垂れ死んでますよ」
タイトルには縁がなかった。それでも世間の耳目を集め、ボクシング界の常識に一石を投じたことは事実だ。記録よりも記憶に残る兄弟の、過去と今の物語に耳を傾けた――。