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「すみません、阪神には行けません」星野仙一に断りの電話、その返事は? 原辰徳に誘われて巨人入り、メジャー球団の契約破棄も…中日“あの1億円エース”の今

posted2025/01/30 11:04

 
「すみません、阪神には行けません」星野仙一に断りの電話、その返事は? 原辰徳に誘われて巨人入り、メジャー球団の契約破棄も…中日“あの1億円エース”の今<Number Web> photograph by JIJI PRESS

野口茂樹は原辰徳とも浅からぬ縁があった

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岡野誠

岡野誠Makoto Okano

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1990年代後半から2000年代初頭にかけて、中日のエースとして活躍した野口茂樹(50歳)。2005年オフ、中日に居場所がないと実感していた野口のもとに1本の電話が鳴る。「もしもし、巨人軍の原辰徳です」【全3回の3回目】※敬称略、記録などは当時

◆◆◆

 野口茂樹は原辰徳とも現役時代に浅からぬ縁があった。

くすぶる野口に原辰徳の電話

 野口が何度打たれてもマウンドに登っていた3年目の95年、巨人はヤクルトの主砲・広沢克己、ジャック・ハウエルを獲得し、長年4番を打ち続けてきた原の出番が激減していた。冷遇される若大将にファンは寄り添い、たまに代打で出てくれば大声援を送った。

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 シーズン終盤の9月20日、落合博満の守備固めとしてファーストに就いていた原は野口と相対した。前日、一塁ファールフライに打ち取っていた若武者は、この日も思い切り直球を投げ込んだ。原が5球目をフルスイングすると、打球はレフトスタンド上段へ。3カ月半ぶりの一発を放った男はお立ち台で「たまに出ても、これだけのお客さんがね……声援を送ってくれて……」と涙を流した。

「打たれたのに、不思議と気持ち良かったですね。引退すると感じていましたし、中村さんのサイン通り、全球ストレートで真っ向勝負しました。普通、あんな感情は芽生えない。FAの時の電話も嬉しかった。一番初めに声を掛けてくれた巨人に決めました」

星野に断りの電話「来なくていい!」

 野口が中日で苦しんでいた05年、巨人は開幕から低迷。堀内恒夫監督の退任が決定的となっていた夏には、星野仙一(阪神シニアディレクター)の電撃就任が取り沙汰された。結局、原の再登板で落ち着き、タイガースに残った星野は野口の獲得に動いた。

「星野さんが監督なら、どの球団でも行っていたと思います。結局、選手にとっては誰がトップかが大事なんで。だけど、フロントでしたからね」

 中日入団時の担当スカウトである早川実に携帯番号を聞き、意を決して星野に断りの電話を掛けた。心臓の鼓動が高まるのを感じながら、「すみません。阪神には行けません……」と精一杯の声を絞り出すと、「(謝りには)来なくていい!!」と耳をつんざくような大声が聞こえ、通話は終了した。

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