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難病からカムバックした大学生ドラ1候補…ドラフト記者「彼が天才じゃなくて、誰が天才なのか?」2022年ドラフト目玉候補《内野手ベスト3》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2022/10/16 11:02
ドラフト目玉ベスト3 内野手編【1】亜細亜大・田中幹也(166cm64kg・右投右打・東海大菅生高)
内野手編【3】立正大・奈良間大己(174cm74kg・右投右打)
高校時代の露出度と輝かしい実績なら、亜細亜大・田中幹也や駒澤大・林琢真以上だったのが、立正大・奈良間大己内野手(174cm74kg・右投右打・常葉大菊川高)だ。
3年夏の甲子園に出場して、バックスクリーン横に放り込んだホームランの打球の伸びに驚いた。大阪桐蔭高・根尾昂(現・中日)、藤原恭大(現・ロッテ)らと共に高校ジャパンにも選ばれたエリート街道。だからこそ、リーグ2部が3シーズン続いた大学生活で、どんな辛抱と成長を見せてくれるのか、ずっと注目していた。
2部が長いのに、プレーにくすんだ感じが全くない。いつもどこかを見て、いつも動いている……そんなひたむきな姿には、見ているこちらの心が揺さぶられる。
劣勢の展開の中でも、ボール回しで勢いをつけるようにキビキビ動き、終始、ショートのポジションから爆声で投手や野手を鼓舞。それが、下級生の頃からずっと変わらないから素晴らしい。「組織」を引っ張っていける覇気と言葉を持っている。
二塁牽制でベースに入る絶妙のタイミングと、確かなタッチプレー。三遊間深い位置から、送球の高さが変わらずにファーストミットにピシャリおさまるスローイング能力。二塁盗塁阻止の送球がショートバウンドで三塁寄りに逸れて、サッとバックハンドで吸収すると、そのままタッチアウトの「とっさ力」。夏は40℃を超える埼玉・熊谷のグラウンドでコツコツと磨き上げたそのスキルは、リーグ1部でもまれた先の2人と互角のレベルだ。
最初の2つのストライクは、全身の連動で振り抜いて長打に仕とめ、追い込まれると食いついて、ポテンヒットでもなんでも、とにかく出塁に持ち込む。
何より感動したのは、直近のリーグ戦だ。無死一、二塁。腕に覚えの奈良間選手なら、そりゃあ打ちたい場面だろうに、なんと初球をセーフティバントだ。これがピシャリ三塁線上に転がる絶妙送りバントになって、自身は一塁ヘッドスライディングで間一髪のアウト。
環境はどうであれ、自らの「100%」を出し尽くして勝負に賭ける姿勢は、それ自体が立派な才能だ。
「トップ3」の一角を占める資格十分と考える。
<外野手編へ続く>