気持ちも体も、まだそこまで火のついていない初回の最初のプレーで、100点満点の「200点」ぐらいのスーパープレーをやってのけるのだから、これが天才じゃなくて、いったい誰が天才なのか。二塁ゴロ併殺時のスピード、運動量、伸びやかさ、ハツラツさ抜群のアクションなど、見ていてスッと胸がすく。

　バッテリー目線で見て、こんなに消耗させられそうな打者もいない。

　内角は引っ張ってレフトポール付近フェンス直撃のライナーでドキッとさせ、外のボールは、右方向のファールにして9球投げさせて四球をもぎ取ったかと思えば、ファールを重ねながらタイミングをつかみ、直後、計ったようにライト線に弾き返して、快足飛ばして三塁打に。

　10月6日のリーグ戦では、リードオフマンとして3安打2打点に4盗塁。自身の才能を余さず発揮して、ドラフト直前の痛烈アピールをやってのけた田中幹也。「病後」の陰りは全く感じない。彼のプレーから伝わってくるのは、ワンプレー、ワンプレーに懸ける覚悟と、それを結果に結びつけてしまう「度胸」だ。

　プロで人気者になれるスター性も十分だが、何よりこういう選手と一緒に野球をやれたら、指導者たちもチームメイトも、さぞ楽しいだろうなぁ……と、それも「才能」というものだと思う。

内野手編【2】駒澤大・林琢真（174cm74kg・右投左打）

　天才的なスーパープレーということなら、駒澤大・林琢真内野手（174cm74kg・右投左打・東邦高）だって負けてない。

　駒澤大では1年時から二塁手としてチームのセンターラインを守り続けたこの選手だって、プロとしては小柄だが、そのスピードと「強さ」は十分通用する。

ドラフト目玉ベスト3 内野手編【2】駒澤大・林琢真（174cm74kg・右投左打・東邦高）　©JIJI PRESS

　遊ゴロからの併殺プレー。二塁ベースに入りながら送球を受けた林二塁手が、一塁に背中を向けたまま、強烈な腕の振りだけで投げて併殺を完成させてしまう……そんなふうにしか見えないほどの「一瞬ワザ」だ。

　二塁ベース寄りのゴロも、林が追うと、二塁走者が三進を躊躇するから、これは大アドバンテージ。マウンド後ろに上がった小飛球を、深く守ったセカンドのポジションから猛然と突っ込むと、バックハンドのスライディングキャッチ。これにはまさに「菊池涼介（広島）」のメカニズムを見る思いだった。

　左打者で3秒9なら快足といわれる一塁駆け抜けも、内野安打狙いの爆走なら、3秒8を切ることも。

　二盗では、スタートの鮮やかさで捕手が二塁送球をあきらめてしまうケースもある。大きなストライドでぐいぐいスピードを上げていく走りは、この選手の「馬力」を証明していて、バッティングにしても、真ん中低めのツボに入ると、神宮のライト上段まで運べる長打力は、秘めたる「意外性」。

　セカンドのポジション1つ任せて、ひとシーズン使ったら、この選手はきっと働く。打率2割7分・20盗塁以上で「新人王」でもぜんぜん驚かない。

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