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日本代表にも同行・長谷部誠の“指導者的な観察眼”「ライセンス、Bは取れたので…」 38歳の神通力がフランクフルト監督に頼られるワケ
posted2022/10/10 11:02
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph by
Kiichi Matsumoto
2022-2023シーズンが開幕してからの数試合はアイントラハト・フランクフルトにとって迷いの日々が続いた。
昨季、歓喜のUEFAヨーロッパリーグ制覇を経て周囲からさらなる期待が寄せられていたのとは裏腹に、なかなか進展しなかった新戦力補強、オリヴァー・グラスナー監督が目論む戦術浸透の停滞、そしてブンデスリーガ、UEFAチャンピオンズリーグでの成績低迷に加え、8月中旬には攻撃の核だった左サイドアタッカーのフィリップ・コスティッチがユベントス(イタリア)へ移籍してチーム戦術の再考も余儀なくされた。
チームが低調に喘ぐ中、それでもチーム最年長選手の長谷部誠は冷静に現状を捉えていた。今のチームの何が問題なのか。復調には何が必要か。現チームにさらなる伸びしろはあるのか。現役選手としてはもちろん、全体を俯瞰して観察する指揮官的な視座で、長谷部は現状打破への道筋を見出そうとしていた。
僕自身がそういうチャンスをもらった中で
ブンデスリーガ第7節のシュトゥットガルト戦でリーグ戦初先発の機会を得た長谷部は3-1で快勝した試合終了直後のミックスゾーンで、淡々とした調子でこう話した。
「対戦相手との兼ね合いもあって、ヴォルフスブルク戦(ブンデスリーガ第6節/●0-1)やスポルティング(・リスボン)戦(CLグループステージ第1節/●0-3)の2試合は試合内容が良くなくて、誰が出ているからどうこうというよりは、チームとしてうまく機能していなかったところがある。
一方で、(オリンピック・)マルセイユ(CLグループステージ第2節/○1-0)や今回のシュトゥットガルトは3バックを採用していて、自分たちがどういう形でやるかという時に、『3バックでやった方がハマるよね』ということで、監督も考えたうえで自分が出場することになった。僕自身がそういうチャンスをもらった中で、チームとして結果が出たのは良かったと思います」
フランクフルトのグラスナー監督は今季序盤から4バックシステムへの転換を目論んでいたが、それには幾つかの理由があったように思う。
その最たるものはDFマルティン・ヒンターエッガーが29歳の若さで現役引退したことである。
ヒンターエッガーが引退を決断した理由については割愛するが、昨季、長谷部に代わって3バックのリベロとして機能していた彼を失った戦力面のダメージは大きく、グラスナー監督はその任をDFルーカス・トゥタなどに託したが、なかなか試合内容を向上させられなかった。その結果、現有戦力を見極めてバックラインにCBをふたり置く消極的変更へ舵取りしていった流れがあった。
歴代監督が頼ってきた“長谷部の神通力”
しかし、それでもチーム成績が上向かない現状を鑑み、グラスナー監督は38歳の長谷部にチーム立て直しの責務を求めた。