ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
日本代表にも同行・長谷部誠の“指導者的な観察眼”「ライセンス、Bは取れたので…」 38歳の神通力がフランクフルト監督に頼られるワケ
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/10/10 11:02
日本代表9月シリーズに姿を見せて話題になった長谷部誠だが、フランクフルトではプレーヤーとして存在感を発揮している
思えばここ数年のフランクフルトはチームが窮地に陥ったとき、数多の指揮官が長谷部の“神通力”に頼ってきた。
ニコ・コバチ(現ヴォルフスブルク監督)にリベロの才能を見出され、アディ・ヒュッター(前ボルシア・メンヘングラッドバッハ監督)に戦力外を匂わされながらもレギュラーポジションを維持し続け、現在はグラスナー監督と良好なコミュニケーションを交えてチームに貢献する覚悟を決めている長谷部は、またしても苦境に立つチームを再建する担い手としてピッチへと促された。
日本代表への同行と、“指導者”というセカンドキャリア
シュトゥットガルト戦後に代表Aマッチウィークへ突入したフランクフルトは数日間のオフ日を設けた。長谷部はその間を利用し、ドイツ・デュッセルドルフで親善試合を行う日本代表へ3日間同行し、その様子が日本の各種メディアで報じられた。
これはもちろん長谷部自身がセカンドキャリアの中で指導者への道も模索していることと関連している。実際に長谷部は今季開幕前からドイツの指導者カリキュラムに参加し、それを周囲に明かしている。
「ライセンスですよね? もうB(級)は取れたので、今シーズンはユースの練習や試合を見に行ったりもしていますけども、やっぱり今の自分のメインは選手(としての仕事)なので、そこに集中したいということで、チームともいろいろ話していますけども、(指導者ライセンスに関しては)時間があればという感じでやっていこうかと思っています」
長谷部が指導者ライセンス取得に励んでいる影響はピッチ上のプレー内容にも及んでいるように感じる。当然グラスナー監督が自身に求める役割と戦術・戦略をしっかり踏襲したうえで、自らのプレーがチームにどんな作用を及ぼすのか、その効果と実現度を客観的に見極めて、先述したように俯瞰した目線でゲームを捉えられているように思うのだ。
首位相手に先発、完封勝利…プレーレベルも高まっている
国際Aマッチウィーク明け初戦、10月1日のブンデスリーガ第8節、首位に立つウニオン・ベルリンとのホームゲームで当然のように先発した長谷部は2-0のシャットアウト勝利に貢献した後のミックスゾーンで達観したように感想を述べた。
「相手のことをしっかり研究して、その通りにプレーができた。良いゲームだったと思います。相手には速いFWがいますから、それに対応して、自分たちは少しブロックを低くして、相手を引き込んだうえで、素早い攻撃で相手のディフェンスラインの裏を突くことを重要視していた。その通りにゲームが進んだので、(事前の)分析が良かったなと思います」