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日本代表にも同行・長谷部誠の“指導者的な観察眼”「ライセンス、Bは取れたので…」 38歳の神通力がフランクフルト監督に頼られるワケ
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/10/10 11:02
日本代表9月シリーズに姿を見せて話題になった長谷部誠だが、フランクフルトではプレーヤーとして存在感を発揮している
個人的には、長谷部自身のパフォーマンスは昨季よりも格段にプレーレベルが高まっているように感じた。
本人も述懐しているが、ウニオンは今季すでにリーグ戦6得点をマークしているシェラルド・ベッカーという快速FWと、ポストワークと空中戦で強みを発揮して同3得点を挙げているジョルダン・シエバチュが2トップを形成する厄介な相手だった。
しかし長谷部は次なる戦況を即座に予測できる抜群の危機察知能力でベッカーのランニングスペースを埋め、シエバチュとの空中戦ではボール落下地点に先んじて入り込んでヘディング勝負を制した。敵が備える異次元の身体能力を卓越した頭脳で封じるその姿に、『ドイチェ・バンク・パーク』を埋めたフランクフルトのサポーターは何度も感嘆のため息と絶賛の拍手を浴びせた。
10代の頃と何ら変わらない“ガニ股”と内面
取材記者へのミックスゾーン対応を終えた長谷部がロッカールームへと引き上げていく。少し胸を反らせ、特徴的なガニ股で歩く姿勢は10代の頃と何ら変わっていない。去り際にこちらと視線を合わせると、彼は「お疲れーっす」と言ってずんずんと歩を進めていった。
尊大ではない。物事に動じていないわけでもない。しかしその仕草からは彼の内面に貫かれる揺るぎない自信が示されている。歴戦の中で培った経験、特に若き時代の蹉跌が、2022年の現代に、ブンデスリーガ最年長選手にして、ヨーロッパの第一線に立ち続ける長谷部誠というプロサッカープレーヤーを形作った。
<後編へつづく>
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