猛牛のささやきBACK NUMBER
なぜオリックスは11.5差から逆転できた?「っしゃ!俺も抑えたろう」覚醒の中継ぎ陣が優勝争いを楽しめた理由《2年連続最下位→連覇》
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJIJI PRESS
posted2022/10/05 11:02
序盤は下位に沈んだが、後半戦の巻き返しでパ・リーグ連覇を達成したオリックス
「どうも4、5回あたりでもたついていた。イニングを長く投げなきゃいけないということで、自分のパフォーマンスが出せないというか、思い切ったことができていなかった。だったら短いイニングを思い切って行かせたほうが、颯一郎に関してはよくなるんじゃないかなというのがありました」
その狙いが的中。「中継ぎは1イニングで決まるので、初球からストライクゾーンにしっかり投げ込もう」というシンプルな意識で、山崎颯は腕を振った。
常時150キロを超えるようになった角度のあるストレートを軸にストライクゾーンで勝負し、リリーフとしては10試合でわずか1失点。侍ジャパンにも選出される躍進を遂げた。
指揮官はこう振り返る。
「宇田川、颯一郎、阿部、ワゲスパックとか、あのあたりがカタチになりつつあった時に、これは、いけるなと思いました」
彼らは昨年の優勝争いのブルペンにはいなかった。経験の少ない選手が力を発揮できた要因の一つに、中嶋監督の巧みな起用法がある。
「おっ?」能見も驚いた中嶋監督の起用法
2年間選手兼任コーチを務め、今年限りでの現役引退を決めた能見篤史がこう語っていた。
「(若い中継ぎ陣が)育ってきていると思いますし、僕が一番すごいと思うのが、起用できる監督。僕も18年やってきて、ある程度ピッチャーって、勝ちパターンがいたり、いろんな役割があると思うんですけど、それでも(違う選手を)ドンとマウンドに上げられる。しかもそれがいい方向に行く、というのがすごい。それはなんだろうか?といつも考えているんですけど、答えが見つからない」
基本的に3連投をさせない、選手のコンディションを第一に考えた起用はもちろん、いわゆるセオリー通りではなかったり、思い切った抜擢に見える采配がある。能見でも「おっ?」と感じることが多々あるという。
「たぶん監督にとっては思い切った采配でもないと思うんですよ。そこには何かしら根拠があると思う。監督力というのは大きいと思います。点を取られることがあるのは仕方がない。取られない人なんていないんで。でも取られる確率が非常に少ない。僕は2年しかいなくて、低迷していたオリックスを知らないですけど、この2年でこうも変わるというのは、絶対に何かあると思うんですよね」