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なぜオリックスは11.5差から逆転できた?「っしゃ!俺も抑えたろう」覚醒の中継ぎ陣が優勝争いを楽しめた理由《2年連続最下位→連覇》 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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posted2022/10/05 11:02

なぜオリックスは11.5差から逆転できた?「っしゃ!俺も抑えたろう」覚醒の中継ぎ陣が優勝争いを楽しめた理由《2年連続最下位→連覇》<Number Web> photograph by JIJI PRESS

序盤は下位に沈んだが、後半戦の巻き返しでパ・リーグ連覇を達成したオリックス

 普段は采配について一切語らない中嶋監督が、優勝記者会見の後、継投についてほんの一端だが明かした。

「(試合前に)ピッチングコーチとみんなで相談して、順番というか、こういう展開になったらこうでしょうね、というのは最初に言っています。決まった順番、はあるんですけど、決まった順番じゃない。そこは展開次第で臨機応変に。(その回の相手の)打順ももちろんありますし、どこでアウトになるかとか、誰が代打で来るかとか、いろんなことを考えないといけない。足を使われる打順にはなかなか行けないピッチャーもいるでしょうし。どこの監督もやっていると思いますよ」

 また、投手に限らず、一軍に昇格したばかりの選手に結果を出させることにも長けている。入団1、2年目の選手が結果を出していく姿を見て、牧田勝吾編成部副部長はこう語っていた。

「中嶋監督が、選手が力を発揮しやすい環境や、出た試合でヒーローになれるようなタイミングで使ってくれているからだと思います。さすがだなと。現場の感覚というか、もちろんデータもあるでしょうけど、球場のマウンドの角度や硬さとか、いろんな要素を考えて。そこで結果を出す選手もですけど、思い切って使える監督がやっぱりすごい。中嶋監督は本当に研究熱心。『寝れてるんですか?』って言っちゃうぐらい研究して、自分の頭の中にいろんなものをインプットされている。記憶力もすごいです。

 例えば宇田川にしても、投げれば抑えられるみたいなタイミングで投げさせてもらって、自信になったんじゃないでしょうか。彼はまっすぐとフォークという絶対的なものがあり、振ってくる打線であれば、フォークを使える。初登板が西武戦でしたが、西武はやっぱり振ってきますから、特にクリーンアップは。そこで2三振を奪って自信をつけさせてもらえたのかなと感じました」

選手の負担を減らす監督・コーチの言葉

 また、監督・コーチ陣の、個々に合わせた言葉がけも、選手を伸び伸びとプレーさせる要因となっている。

 宇田川は、8月13日のソフトバンク戦の9回、周東佑京にサヨナラ本塁打を打たれた。宇田川にとって初失点で、チームにとっては一旦自力優勝の可能性が消滅する敗戦だったが、その後、水本勝己ヘッドコーチにこう言われたという。

「出したのはベンチだから。打たれてもベンチのせいにしていいから、自分のピッチングをすればいい」

 宇田川は、「その言葉でちょっと楽になりました。考えすぎず、どんな場面でも自分のピッチングをしようと思えた。一軍には一流のバッターがいっぱいいるんですけど、その言葉があったから、そういうバッター相手にもビビらずに、今できているのかなと思います」と感謝する。

 本田は、「高山さん(郁夫投手コーチ)はほぼ毎日、会うたびに『お前がいるから安心だよ』と言ってくれる。それが僕の中ではうれしいし、頑張ろうという気持ちになりますね」と語っていた。

 能見や平野佳寿、比嘉幹貴といった、若手に安心感を与える経験豊富なベテランの存在も大きい。

 と同時に、若い投手たちの互いに刺激を与え合う関係が、本来ならプレッシャーのかかる終盤戦に活きた。

【次ページ】 大逆転Vを呼び寄せた“チーム内の競争”

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