猛牛のささやきBACK NUMBER
なぜオリックスは11.5差から逆転できた?「っしゃ!俺も抑えたろう」覚醒の中継ぎ陣が優勝争いを楽しめた理由《2年連続最下位→連覇》
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJIJI PRESS
posted2022/10/05 11:02
序盤は下位に沈んだが、後半戦の巻き返しでパ・リーグ連覇を達成したオリックス
終盤戦のブルペンにいた山崎颯と宇田川、新人の小木田敦也は同学年で、本田はその1つ下。歳の近い4人は仲が良く、だからこそ互いに「負けたくない」と競い合う。
特に山崎颯と宇田川は張り合う仲だ。クローザーの平野佳寿が不在だった9月20日のロッテ戦で、山崎颯が9回のマウンドに上がり初セーブを挙げた時の心境を、宇田川はこう話す。
「僕はまだセーブを挙げていないので、『先越されたな』という悔しさはありました。颯一郎が結果を出したら、嬉しいけど、負けたくないって気持ちもあります」
一方の山崎颯は、「(今季の)初勝利はあいつに先に取られたんで、先にセーブ取りました。やり返したった」と笑う。
ソフトバンクをピタリと追走し、負ければ優勝が遠のく。そんな息がつまるような終盤の優勝争いのさなか、山崎颯は「今すごく楽しいです」と満面の笑顔で語っていた。
「緊張はするんですけど、宇田川や小木田や仁海がいいピッチングをすると、『っしゃ! 俺も抑えたろう!』って、イケイケになるというか。緊張やプレッシャーよりも、『やってやろう』って気持ちが出てきます」
だから、本来なら重圧がかかる勝負どころのマウンドでも、経験の浅い若手が思い切り腕を振ることができた。
オリックスが勝ち、ソフトバンクが敗れなければ優勝の可能性がなかった10月2日のシーズン最終戦もそうだった。
4回裏に楽天に2点を先行され、なおも無死1、2塁の場面で宇田川がマウンドに上がる。四球で満塁とするが、そのピンチをしのぐと、回をまたいで5回も無失点に抑えた。
すると6回からマウンドに上がった山崎颯が、「負けてられん」とばかりに2者連続三振の好スタートを切り、圧巻の投球で2イニングを無失点。
その後、ワゲスパック、阿部も0を並べ、リリーフ陣が踏ん張る間に打線が逆転し、9回に追加点を挙げた。結果的には、6回以降継投に入って逆転を許したソフトバンクと対照的な逆転勝利で、優勝をつかんだ。
目指すは日本一、昨季のリベンジなるか?
選手の不調やコロナ禍による離脱でシーズン序盤は苦しみ、5位に沈んだ。5月には首位だった楽天に最大11.5ゲーム差をつけられた。そこから巻き返し、終盤戦は取るべき白星をしぶとく拾って、最後の最後で劇的な逆転優勝。
76勝65敗2分はソフトバンクと同じ。直接対決で勝ち越していたため、オリックスが優勝した。9月17日からの最後の直接対決3連勝が大きかった。
ギリギリでもぎ取った優勝だが、選手の顔ぶれや戦い方を見ると、まだまだ伸び代を残しての連覇と言える。
今後のクライマックスシリーズ、そして日本シリーズへ。短期決戦の中で、このチームはさらに化けるかもしれない。
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