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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「電車に一本乗り遅れた」市川大祐は“怒りのトルシエ”をどう振り向かせたのか? 日韓W杯前に決めた覚悟「絶対的な数字を残すしかない」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byJMPA
posted2022/09/25 17:02
2002年日韓W杯でプレーする市川大祐。「電車に乗り遅れた」と詰るフィリップ・トルシエを振り向かせるためには、明確な結果が必要だった
「怪我をする前は、ずっと自分自身と戦うことを課してきたんですよ。『もっとできるだろう。何をやっているんだ』と。でも怪我をしたあともそれを続けていたら、パンクしていたと思います。そうじゃなくて、自分と協力しようと考えたんです。決して甘やかしているわけではないんですけど、できたことに対して『今日はこんなこともできたね』と褒めてあげる。膝と話をしながら、『今日も1日頑張ってくれてありがとう、明日も頑張ろうな』みたいな、本当にそんな感じでした」
指導者として伝えたい「成し遂げることの喜び」
W杯ドイツ大会への出場こそ叶わなかったものの、毎シーズン多くの公式戦に出場した市川は、2010年末に清水を離れた。さらにJ2、J3、JFL、地域リーグとさまざまな舞台を経験し、2016年シーズン終了後に現役を引退。その後は、清水エスパルスのアカデミーで指導者として活躍している。
「エスパルスのサッカースクールを2年やって、そのあとにジュニアユース清水で3年間。今年は三島のジュニアユースでU-13のチームを見ています」
かつて“日本一忙しい高校生”と呼ばれ、自国開催のW杯のピッチに立った。その一方で、オーバートレーニング症候群や膝の負傷にも苦しめられた。そんなプロとしてのキャリアは、子どもたちを指導するうえでどう生きているのだろうか。
「自分が好きなこと、小学生のときから大好きだったものを仕事にできたのは、すごく幸せなことです。だけど、それゆえの苦しさというか、もどかしさもあることをプロ生活のなかで強く感じました。もちろん、自分が思い描いている通りにものごとが進むときもあります。でもそんな時間は、本当に短い。どちらかというと自分が思い描いた通りにいかず、もがき苦しむ時間のほうが長いかもしれません。
だからこそ、何かを達成したときの喜びが、ものすごく大きい。だからサッカーを続けてこられたと思っています。そういう喜びを子どもたちにも伝えたい。君たちが目指している場所はすごくいいところだけど、そんなに甘くはないし、好きなことだからこそ辛いこともいっぱいあるんだよ、って。自分の経験が子どもたちの育成に生かせるとしたら、これまでの苦しみも喜びもそのためにあったのかな、と。幸いにしてピッチ内外でいろんな経験をしたので、それを伝えていくことも僕の役目なのかなと思います」
<前編から続く>
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