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「とにかく野球の話をしているときが一番楽しい」大田泰示32歳が、DeNA移籍1年目で得た新しい感覚「若い選手には思い切って失敗してほしい」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph bySankei Shimbun
posted2022/09/26 11:05
8月6日、移籍後初となるサヨナラ打を放った大田。喜びの感情を爆発させ、三浦監督とも抱擁。お立ち台では「ヨコハマ、サイコー!」と叫んだ
とにかく野球の話をしているときが一番楽しい
「宮﨑さんには相手ピッチャーの球質やアプローチの仕方を訊いたり、光さんはパ・リーグで一緒にやってきたこともあってリーグの違いについて話したり、大和さんは打撃の考え方がすごくシンプルなので、試合後に打席に入った感覚や打ったときのイメージとかを尋ねたりしています。とにかく話している内容は野球のことばかり。僕たちは知識を増やさなければいけないのは当然なのですが、とにかく野球の話をしているときが一番楽しいんですよ」
そこはやっぱり野球大好きな大田選手ですねえ、と言うと「あははは」と若干照れた様子で快活な笑顔を見せてくれた。
さて今季の大田は、新型コロナの陽性判定や右太ももの裏の張りなどのアクシデントで幾度となく戦列を離れてしまったものの、ここまで55試合に出場し(データは9月24日現在、以下同)、打率.292、出塁率.319、OPS.808とまずまずの数字を残している。打撃不振で苦しんだ日本ハム時代の昨季とくらべれば、本来の実力を発揮していると言ってもいいだろう。来たボールに対し、無駄のない素直なアプローチが見て取れるが、このあたりの変化について大田は次のように説明する。
「今までパ・リーグで多くの打席を過ごしてきて、セ・リーグに移籍したことでゼロからのスタートになりました。相手ピッチャーの球質や配球など未知数だったので、それも含めてとにかくシンプルに、まずは速いボールを意識しつつ、緩いボールが浮いてきたら仕留めるといったイメージですね。また今まではバットを長く持って大きくスイングしていたのですが、知らないピッチャーも多いなか、バットを短く持ってコンタクトすることだけを心掛けています。前に飛べばなにかが起こる」
石井コーチ、鈴木コーチ、田代コーチから…
昨季大田が不振に陥ったのは、ボールに角度を付け、大きい当たりを狙うことにこだわり過ぎて自分のバッティングを見失ってしまったからだ。しかしDeNAに来てからは、持ち前の左肩の開きを制御するフォームに磨きを掛け、センターから右方向を意識したコンタクト重視のバッティングに切り替えたことが功を奏している。もちろん大田が自ら考え見出した方向性であるが、それをサポートしたのが石井琢朗野手総合コーチ、鈴木尚典打撃コーチ、そして巨人時代に指導を受けていた田代富雄巡回打撃コーチといった面々である。