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《ヤクルト連覇》村上宗隆の打球音に「恐怖を感じる」…60本バレンティンも支えた“名打撃投手”が証言「今年の村上の方が上」「本当によく出来た青年」
posted2022/09/26 11:06
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Hideki Sugiyama
村上の“試合前ルーティン”…打球音に「恐怖を感じる」
本拠地・神宮球場で行われる試合前練習。ライトスタンド脇の通路から若き主砲が現れると、まだ観客のいないスタンドで取材するカメラマンのレンズが一斉にその方向を向いた。9月半ばを過ぎても残暑厳しいこの日、村上宗隆はTシャツに短パン姿。バットを肩に担ぎ上げ、のしのしと歩く姿はまるで、心優しきジャイアンといった風貌だ。
村上のバッティング練習は「置きティー」から始まる。ゴム製のティースタンドにボールをセットし、バットの軌道や体の開き具合を確認しながら丁寧に振り込んでいく。これは今季から取り入れたルーティンだ。次にトスしてもらったボールを振り込むティーバッティングをはさみ、バッティングケージの中で打撃投手の生きた球を打つフリーバッティングが始まる。バットがボールを捉える瞬間のガツンと響く破裂音。少し遅れて、打球が外野スタンドの座席を襲うバコンという衝突音。二つの音の応酬が、開門前の神宮球場に響き渡る。
「とにかく打球音が物凄いんですよ。あれは今まで聞いたことがないような音。投げていても、インパクトの瞬間は思わずビクッとしてしまうほどです。あとは打球の角度、初速も凄まじい。打席から15〜6mくらいの位置から投げているので、恐怖を感じることもありますよ」
「球種やコースのリクエストも特にない」
そう笑顔で明かすのは佐藤賢打撃投手だ。本拠地でのフリーバッティングは2カ所のケージで行われ、左右それぞれの打撃投手がピッチャー役をつとめる。主力打者は選手ごとに担当がほぼ固定されており、村上に対しては、右は七條祐樹打撃投手、左はこの佐藤打撃投手がパートナーをつとめる。