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「娘には“ボロボロの1年生”って言われてます」元バレー代表キャプテン荒木絵里香(38)は早稲田の大学院で何を学ぶ?〈引退から1年〉 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/08/23 11:01

「娘には“ボロボロの1年生”って言われてます」元バレー代表キャプテン荒木絵里香(38)は早稲田の大学院で何を学ぶ?〈引退から1年〉<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

現役引退後、早稲田大大学院に進んだ荒木絵里香。研究テーマはもちろん「ブロック」だ

 将来を嘱望された大型選手とはいえ、当時はまだ10代。学生として学びたい、バレーボールの知識を得たいという向上心と、逃げ場をつくっておきたいという甘えは隣り合わせにあった。

 大学進学か、Vリーグに進むか。幸い、選手を型にはめることなく自主性を尊重する恩師・小川良樹監督の指導を受けた荒木は急いで進路を決めることを求められなかったが、1つずつ経験や全国大会での戦績が積み上げられていく中で「もっと高いレベルで勝負してみたい」という感情が強く芽生え、Vリーグに進む道を選択した。

 だが、学びの欲を捨てたわけではなかった。

「20歳頃だったかな。選手を引退してから大学や大学院に通う選択肢もある、と知ったんです。同じ女子バレーの先輩でもトモ(吉原知子)さんや(多治見)麻子さん、実際に現役引退後に大学院へ進んでいる方々もいたので、自分も現役を引退したらまず大学院に行きたい、と。バレーボールをやってきたという経験だけではなく、もっと広い知識や考え方を得たいという思いがずっとありました」

 まさに有言実行とばかりに、21年の引退から半年後には大学院へ。エリートコーチングコースを専攻し、早稲田大男子バレーボール部の監督も務める松井泰二教授に師事する。絵に描いたようなセカンドキャリアの第一歩ではあるのだが、「もっと入念に準備をすればよかった」と振り返るように、高校卒業から約20年ぶりとなる学生生活への道のりは決して簡単なものではなかった。

後輩たちにアドバイス?

 まず、最終学歴が高卒である荒木が大学院を受験するには、その資格を得なければならない。学校によって規定は異なるが、荒木が進んだ早稲田大学院の場合、アスリートや指導者は国際大会での実績の提示が求められた。最初の段階では五輪出場の証明書類を添えた自身のキャリアや志望動機の提出が義務付けられており、その証書を探すこと自体が大仕事だったと苦笑いを浮かべる。

「オリンピックに出ると、出場した証書をいただけるんです。でも私、マメにちゃんと整理しておくタイプではないので、まぁ見つからない(笑)。とにかく手を尽くして探しました。だから今現役で頑張っている選手にも、その証書がどこでどう必要になるかわからないから、ちゃんと整理して大事にしないとダメ、と声を大にして言いたいです(笑)」

 かき集めた書類を提出し、同時に「大学院で何を学びたいか」を記した研究計画書を数本のレポートにまとめた。その後の面接を経て、晴れて22年4月に入学。年齢や専門競技も異なる5名の同期と共に学びの日々が始まった。

【次ページ】 スペシャリストが研究する「ブロック」

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