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甲子園の風BACK NUMBER
「大阪桐蔭打線の重圧で1回が長く感じる」「ピンチになるとギアが…」秘密兵器の先発、奇策の守備シフトも想定内な王者に“油断”はない
posted2022/08/17 17:08
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Nanae Suzuki
どのチームも正攻法では勝利が難しいと自覚している。それだけ、攻撃も守備も隙がない。大阪桐蔭の高く厚い壁。二松学舎大付属の市原勝人監督は、意表を突く“秘密兵器”を先発投手に起用した。
マウンドに立ったのは、今大会1回戦も2回戦も「5番・レフト」でスタメンに名を連ねた大矢青葉選手だった。東東京大会でも登板は1イニングしかない。市原監督は試合後、狙いを明かす。
「大矢はスライダーという決め球がある。決め球があれば、少しは直球が通用するかなと考えていた。辻は疲労骨折から復帰して長くないので、中1日はどうかなというのもありました」
大阪桐蔭のペースを狂わせて勝機を見出す。普段通りの攻撃を封じる意図があった。相手の予想を外すことには成功した。大阪桐蔭は右投げの大矢選手ではなく、エースナンバーを背負う辻大雅投手または布施東海投手、いずれかの左腕を想定していたという。
「左対策を重点的に練習してきましたが、右がいることも」
だが、大阪桐蔭は動じない。4番・丸山一喜選手が言う。
「左投手の対策を重点的に練習してきましたが、右投手がいることもチームで共有していました。普段から右投げの打撃投手のボールを打つ練習をしているので、右投手が先発でも慌てることはありませんでした」
先頭打者の伊藤櫂人選手も準備ができていた。
「左投手が先発と頭に置いていましたが、右投手を打つ打撃練習や準備もしてきました。相手の右投手の映像も確認していました」
初回、伊藤選手は2球連続の内角スライダーで追い込まれるが、2ボール2ストライクから外角のフォークをレフトへ弾き返す。外野手が深い守備位置を取っていたのを見逃さず、二塁を陥れた。データが多くない投手の落ちるボールを捉える対応力。
「1番打者として自分が出塁することでチームに勢いが出ると思って、打席に入っています」
まるで、奇策は通用しないとメッセージを込めたような打球だった。
まるでメジャーのような守備陣形の秘策も…
1アウト三塁として、3番・松尾汐恩選手。伊藤選手と同様に2球で追い込まれる。ここでも、大阪桐蔭打線の強さを見せつける。ボールを見極め、際どいボールはファウルにしてフルカウントとする。最後は、外角低めに落ちるスライダーを悠然と見送り一塁へ歩いた。
先制のチャンスで打席に入るのは4番・丸山選手。ここで、二松学舎大付属の守備が仕掛ける。