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“イチロー流な走力”の世代最強スラッガー浅野翔吾 スカウトが“ドラフト上位級”とホレる4つのセンス〈打撃は吉田正尚・平田良介型〉

posted2022/08/17 17:05

 
“イチロー流な走力”の世代最強スラッガー浅野翔吾 スカウトが“ドラフト上位級”とホレる4つのセンス〈打撃は吉田正尚・平田良介型〉<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

豪打でドラフト目玉候補となった高松商・浅野翔吾。プロ野球スカウト視点では打力以外の面にも注目しているという

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間淳

間淳Jun Aida

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Nanae Suzuki

 ベスト8が出そろった第104回夏の甲子園。プロがドラフト会議に向けて熱視線を注ぐ浅野翔吾(高松商)と大阪桐蔭のプレーを深掘りする(全2回の1回目/#2も)

 派手な一発はなくても、プロ注目選手と評される所以を証明した。試合開始前のスタメン発表。今大会の平日で初めて入場券が完売となった甲子園のスタンドが沸く。

「1番、センター浅野くん」

 高松商の浅野翔吾選手は新チームになってからの定位置、1番に座った。

 初回、長打を警戒する九州国際大付属バッテリーは、外角にボールを集める。浅野選手は2球連続で、外角に外れる投球を悠然と見送る。3球目は外角いっぱいの直球を見逃してストライク。外角中心の配球を感じ取った浅野選手は4球目、外角のチェンジアップをスイングする。

 タイミングが合わず、力のない打球はセカンド正面へ。深めの守備位置を取っていた九州国際大付属のセカンドはダッシュで捕球し、ファーストへランニングスロー。浅野がファーストを駆け抜けると、一塁塁審は両手を横に広げた。

 足でヒットを稼いだ浅野選手は、走者としても50メートル5秒9の俊足を披露する。2番打者がスリーバントに失敗して三振となった直後のことだ。

 チームに嫌なムードが漂う中、3番打者の初球でスタートを切った。九州国際大付属の先発・香西一希投手は左投げ、野田海人捕手は投手として140キロを超える直球を投げ込むほどの強肩。決して、盗塁を仕掛けやすいバッテリーではない。だが、浅野選手は好スタートで悠々と二塁に到達。ホームランを期待するスタンドを足で沸かせる。

スカウトがなぜ内野安打と盗塁を評価したか

 浅野選手がプロ注目と言われる理由は、打力に加えて足への評価もある。プロ野球スカウトの1人は初回の内野安打と盗塁について、こう話す。

「浅野選手は右打ちですし、バットをしっかり振り切ってから一塁に走り出します。スイングの中に一塁へ走り出す動きを入れて内野安打をかせぐイチローさんのようなタイプではありません。脚力の強さと、スピードに乗るまでの早さが武器です。盗塁は完璧なスタートでした。足の速さは魅力ですが、投手のクセを盗んだり、配球を読んだりする能力は打撃にも生きます。身体能力だけではプロで通用しません」

 浅野選手は二盗成功を「ギャンブル」と表現した。しかし、明確な根拠があった。九州国際大付属バッテリーの配球を読み、自らの判断で走るタイミングを決めていた。

 本人はこのようにも語っている。

【次ページ】 イチローから伝授された「静かなリード」を心掛けて

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