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冨安健洋のアーセナルは“ハイレベルなDF出世競争” マンUが悩む“盛りの過ぎた37歳クリロナ問題”《プレミアBIG6最新序列・布陣》
posted2022/08/13 11:01
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Sports Graphic Number/Getty Images
トッテナム:ケイン&フンミンは今シーズンも健在
昨季途中に就任し、チャンピオンズリーグ出場権をもたらしたアントニオ・コンテ監督は今夏、自身の望みをほぼ完璧に叶えてもらった。
タフな交渉人で知られるダニエル・リービー会長に、これまでのように値下げを狙うのではなく、クラブの発展に必要な新戦力の獲得には機先を制すことが重要と説得。7月の段階でリシャルリソン、イブ・ビスマ、イバン・ペリシッチ、フレイザー・フォースター、ジェッド・スペンスを獲得した。現在53歳のイタリア人監督が快く仕事に取り組めば、多くの場合、トロフィーが約束されるのだから──ユベントス、チェルシー、インテル・ミラノで見てきたように──、吝嗇家の会長も変貌したのだろう。
1年前、その会長にマンチェスター・シティへの移籍を阻まれたハリー・ケインも、今では再びクラブに忠誠を誓い、昨シーズンのプレミアリーグ得点王ソン・フンミンは母国でのプレシーズンツアーで英気を養ったはず。この前線の2枚看板に加え、進境の著しいデヤン・クルセフスキが並ぶ3トップは、欧州でも指折りの破壊力を秘める。新加入のリシャルリソンといえど定位置は確約されておらず、集団のなかでも競争が激化しそうだ──それこそ、真のトップチームになるために必要なことであり、コンテが望んでいるものだ。
“W杯に出場しなさそう”な選手が多いのは利点?
実際、サウサンプトンとのホームでの開幕戦に、新戦力はひとりも先発しなかった。つまり、昨季の仕様でも十分に勝負はできるが、より高みを目指すために監督は大型補強を切望したわけだ。そして同じ選手でも躍動感が増したように見えたチームは、逆転で4-1の大勝を収める最高のスタートを切った。
この一戦では、1得点と1アシストを記録したクルセフスキ、ピッチの至るところに顔を出しては効果的なプレーを続けたピエール・エミル・ホイビェア、2年目に飛躍しそうなライアン・セセニョンらが目立った。いずれも、好き嫌いのはっきりしたコンテ監督から目をかけられ、心身ともにより逞しくなった印象だ。
ライバルと比べて冬のW杯に出場しそうな選手が少ない点も、上位戦線で優位に働くだろう。ポジティブな要素の多い新シーズン、ロンドンの最新鋭のスタジアム付近は期待感に溢れているようだ。短期的なプランかもしれないが、そろそろ2008年のリーグカップ以来のトロフィーに触れ、真のビッグクラブへと発展していく足がかりとしたい。