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三笘薫加入ブライトンは“クラブ史に残る最盛期” オイルマネーで“金満化だけど着実な古豪”とは《プレミアBIG6以外の注目チーム》
posted2022/08/13 11:02
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Sports Graphic Number/AFLO
ブライトン:開幕戦でマンU撃破、躍進のヒミツは?
プレミアリーグに初挑戦する三笘薫にとって、ブライトン&ホーブ・アルビオンは理想的なクラブに思える。なぜならそこには、思慮深く、他者を敬う有能な指導者がいるからだ。
「私たち人間というものは、誰もが自らの中に最悪の敵を抱えている」
リーダーシップと感情知性の修士号を持つグレアム・ポッター監督は、2019年夏にブライトンに招聘されてプレミアリーグに初めて挑んだ際にそう話した。
「指導者は人々にそれを自覚させることを促し、彼らの反応を見る。それはこの仕事において、とてもやりがいのあることなんだ。人々の人生や生活がより良くなるように手助けすることだからね。フットボールの指導者の仕事は、試合に勝つことだけが目的だと思われがちだ。もちろんそれもあるが、私はキャリアを通して人々の成長を手伝い、人生にうまく対処し、ピッチの内外で成功できるように手助けしてきた」
それから3年が経った今、ブライトンの選手たちの多くが見違えるほどに成長し、なかにはビッグクラブに高額で引き抜かれていった選手も少なからずいる。それでもチームは今、最盛期を迎えているのだ。
ポリバレントな選手が多い中で三笘にもチャンスがある
昨季のプレミアリーグでブライトンは9位に終わり、勝ち点51と42得点をマーク──すべてクラブ史上最高記録だ。そしてこのオフにもイブ・ブスマとマルク・ククレジャという二人の主力を手放したにもかかわらず、敵地での開幕戦でマンチェスター・ユナイテッドを2-1で下している。7万人以上の観衆が集まったオールド・トラフォードで堂々たるパフォーマンスを披露し、“夢の劇場”におけるクラブ史上初白星を記録したのだ。相手が堕ちた名門とはいえ、衝撃的な結果に変わりはない。
この一戦で2得点を記録し、マンオブザマッチに輝いたパスカル・グロースは代表歴を持たない31歳のドイツ人MFだが、ポッター監督の下で汎用性とポジショニング、予測力などを磨き、世界最高のリーグでコンスタントに力を発揮している。
「グレアム・ポッター監督は戦術に通じ、相手を細かく分析し、弱点と警戒すべき点を見出す。でもなにより、勇気を持って戦うことを教えてくれるんだ」とグロースは母国メディアに語った。
ほかにも複数のポジションをハイレベルにこなす選手は多く、それが大半のライバルに財政面で劣りながらも、トップハーフで終えられた要因のひとつになっている。
2点を先行する展開だったからか、開幕戦で三笘に出番は回ってこなかったが、初のプレミアリーグのベンチで感じるところはあっただろう。じきに必ずやってくるその時のために、英国南部のビーチリゾートで発展を遂げるクラブとチーム、指揮官、そして仲間たちと共に、刺激的な日々を送っているはずだ。