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冨安健洋のアーセナルは“ハイレベルなDF出世競争” マンUが悩む“盛りの過ぎた37歳クリロナ問題”《プレミアBIG6最新序列・布陣》
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph bySports Graphic Number/Getty Images
posted2022/08/13 11:01
プレミア2年目も活躍が期待される冨安健洋。トッテナム、アーセナル、ユナイテッドの陣容・序列はどんな感じ?
マンチェスター・U:今季も迷走か…クリロナをどう扱う?
イングランド随一の名門クラブが売ってしまった魂は、今季も戻ってきそうにない──たとえ新進気鋭の指揮官を招聘しようとも。そもそも問題の本質はそこにあり、1年間で3人目の監督を迎えることなど、フロントの迷走の極みと言えるものだ。
2005年にユダヤ系アメリカ人一族に買収された誉れ高きフットボールクラブは、2013年に御大アレックス・ファーガソンという指針をなくしてから、完全に道を踏み外してしまっている。その間、リーグ最多となる優勝回数を20から伸ばすことはなく、チャンピオンズリーグでは8強を超えられず、掲げたトロフィーはFAカップ、リーグカップ、ヨーロッパリーグを一度ずつ。他方では、敏腕なビジネスマンたちがクラブのブランドを利用して、過去最高益を上げている。これをスピリットの売却と言わずして、なんと言えるだろうか。
テンハフ監督は有能に違いない、だが
エリク・テンハフ新監督は有能に違いない。彼に率いられたアヤックスが2018-19シーズンのCLで4強に入った際、その戦いぶりは痛快だった。しかし彼のオランダ流のモダンなスタイルをチームに植え付けるには、然るべき時間を要すだろう。
それはホームでブライトンに1-2で敗れた開幕戦でも確認できた。
アヤックス育ちのクリスティアン・エリクセンを偽9番(後半はアンカーに。ここに守備型ではなく配球役を置くのが新監督のこだわりか)に、今夏にそのオランダの盟主から引き抜いたリサンドロ・マルティネスを最終ラインの中央に置いてスタート。序盤は攻撃の連携やプレスの掛け方などに新鮮な変化が感じられたものの、徐々に相手との練度の差が現れ、2点を先行された。終盤に1点を返すのがやっとで、試合前の期待が沸き立つような空気は2時間後にはまったく別のものとなっていた。
クリスティアーノ・ロナウドという問題も抱えている。
移籍を志願した37歳には買い手がつかず、大幅に遅れてチームに合流したため、開幕戦では先発を外れたが、後半に途中出場してもゴールはおろか、効果的な動きもほとんど見せられなかった。昨夏に拍手喝采が響くなか帰還した際は、決定力に加えて若手に好影響を与えることも期待されていたが、1年が経った今、マーカス・ラッシュフォードやジェイドン・サンチョといった国産のホープは、見るからに自信を失くしてしまっている。
それがCR7の存在によるものかは不明ながら、盛りの過ぎたスーパースターは先進的な手法を用いる新指揮官にも、複雑な所感を与えそうだ。
「やらなければならないことは山積みだ」と開幕戦後にテンハフ監督は語った。勇気ある挑戦を買って出た指揮官が頼るのは、旧知の教え子たちに加え(愛弟子フレンキー・デヨングの獲得交渉は難航しているようだ)、やはりブルーノ・フェルナンデスやダビド・デヘアあたりか。
<#1/「マンチェスター・シティ、リバプール、チェルシーの動向」、#3「BIG6以外の注目クラブ」につづく>