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大学野球PRESSBACK NUMBER
「就職氷河期の悲壮感はなかったです」30%以上が留年したが…弁護士、コンサル、一流企業へ、東大野球部エリートの進路やっぱりスゴかった
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph bySports Nippon/AFLO
posted2022/08/04 17:02
この春、東大野球部に入部し、神宮デビューを果たした元ロッテ渡辺俊介の長男・向輝。その東大野球部、就職氷河期世代の“先輩たち”はどんな進路を選んだのか?
古谷は農機や建機などの機械メーカーとして知られるクボタに転職し、現在はグローバルICT本部DX推進部長としてデジタル技術を用いて社内の業務革新などを担当している。
「クボタに全社的なIT部門が新設され、人材を募集していたので、手を挙げました。当時はまだ製造現場などにおいて、ITは遠い存在。会社は、多くのシステムを作っていましたが、実際には現場の人がそう簡単に使ってくれない。そこで『どうやったらシステムを使ってもらえるか』を考えるのが僕の仕事。最初は使ってもらえないのは当たり前で、なぜ使ってもらえないかをトラッキングしていくのが大事なんです。それは、東大野球部時代の洞察のプロセスと同じです。一生懸命、何かに向き合えば、長い目で見るとどんなことでも役に立つなということを実感しています」
最後に…「そもそも東大生の5人に1人は留年しています」
ここまで取り上げた3人とも、東大野球部時代に培ったものを活かした、見事な仕事ぶりである。東大野球部には、就職氷河期など無縁だったことはもはや自明だろう。
最後に、東大野球部の留年率が1992年からの31年間で27%にのぼった事実について、野球部の監督経験者に話を聞いた。2013年から2019年までチームを率いた浜田一志(1987年卒部・土佐高)は、自身の東大生時代も踏まえつつこう話す。
「そもそも東大生全体の平均として、5人に1人は留年しています。野球部の留年率もほぼ同じなので、野球部だから留年するというのは成り立ちません。野球部で留年する学生は、野球をやってなくても留年したと思いますよ。ただし、4年生の1年間、野球をみっちりやるために、春のリーグ戦と日程がかぶる国家公務員試験などを後回しにする選択はありうる。そういうのは、僕はポジティブ留年だと思いますね」
もちろん、その気になればいつでも官庁や優良企業に入れる自信があるからこそのセリフだ。そう考えれば、就活よりも、いましかできない野球を優先させるのは合理的な選択だろう。野球好きの若者にとって、東大野球部は最高の環境なのである。
<前編から続く>