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「就職氷河期の悲壮感はなかったです」30%以上が留年したが…弁護士、コンサル、一流企業へ、東大野球部エリートの進路やっぱりスゴかった 

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沼澤典史

沼澤典史Norifumi Numazawa

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photograph bySports Nippon/AFLO

posted2022/08/04 17:02

「就職氷河期の悲壮感はなかったです」30%以上が留年したが…弁護士、コンサル、一流企業へ、東大野球部エリートの進路やっぱりスゴかった<Number Web> photograph by Sports Nippon/AFLO

この春、東大野球部に入部し、神宮デビューを果たした元ロッテ渡辺俊介の長男・向輝。その東大野球部、就職氷河期世代の“先輩たち”はどんな進路を選んだのか?

「この仕事を10年やっている中で、新卒採用も見ることがあるんですが、普通に就活をして受かる学生はすごいな、素晴らしいなと思いますよ。彼らはしっかりと就活の準備をしているからこそなんですけども、これでは東大野球部は勝てないなとも感じています。実際、何人かの後輩が当社の面接を受けたことがあるんですが、内定の獲得まではいきませんでした。先輩である僕の目からは、みんないい人材だったんですが……」

 済木のキャリアアップの過程を見ればわかるように、就活スキルがなくても人との縁を大事にして会社に入り、実務能力を評価されれば仕事はついてくる。だが昨今では、そもそも就活スキルがなくては、能力を発揮する機会を与えられないのだ。

 これに危機感を覚えていた済木は、野球部人脈から受けた恩を後輩に還元すべく、2019年11月に開催された「東京六大学野球セミナー 就活スタートガイダンス」に講師として登壇している。野球部員と応援部員を対象とした催しであり、このときは3年生の野球部員200名と、応援部員30名が参加したそうだ。

「有名大で野球をやっている学生は、すごくいい人材ですが、キャリアのない新卒を見るときって、その学生がどれだけ深く、この仕事や会社を選ぶ理由を考えてるかを見たいんです。その点が、それまで野球ばっかりの学生は弱くなりやすい。また、学生時代に多くの人とのつながりの中で、どうやって周りの人を巻き込んで結果を出して来たのか、チームワークを育んで来たのかも聞きたい。チーム競技であり、個人競技でもある野球の経験の中から、説得力のある事例を話すための準備が必要ですね」

「就活で受けたのはコンサル2社のみです」

 もっとも、東大野球部は多士済々だ。OBのツテなど頼らずに、なおかつ集団における自分をアピールするのでもなく就活の道を切り開く者もいる。卒部後、単位が足りずに留年した古谷嘉三(2000年卒部・奈良学園)は、5年目の就活でアンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)の内定を得た。

「同期はOBのいる会社を受けることが多かったので、だったら自分はOBがいなそうな会社に行こうと考えていました。5年目でも単位はギリギリだったので卒業は危うくて、就活に全力投球できる状況ではなかったですから、実際に受けたのはコンサルティング企業2社のみです。東大で自分がどう野球を楽しんでいたかというと、洞察力を磨いていたんですよ。だから、社会に出てもそこで勝負したいということを面接では強調しました」

【次ページ】 バッティングピッチャーとコンサルの“共通点”

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