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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「エンゼルスと97億円の大型契約」菊池雄星が自ら作った野球施設「King of the Hill」で伝えたいこと「悩んでいる選手に使ってほしい」
posted2024/12/03 17:46
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
KYODO
「ボールをよく見て」
「捕手の胸元をしっかり見て投げて」
野球の指導でよく耳にする言葉だ。
しかし実際に、投手や打者が「よく見ているか」を肉眼で確認することは難しい。また「ボールが外れた、打てない=よく見ていない」ではないし、「ストライクが入った、打った=とてもよく見ている」という訳でもない。
「King of the Hill(K.O.H.)」の『アイトラッカー』という機器では、人の視線の動きを可視化し、分析し「よく見ているかどうか」を実際に自分の目で確認することができる。
長年、菊池雄星投手のトレーナーを務める伊藤健治さんが『アイトラッカー』と呼ばれる特別なメガネをかけてバットを振ると、伊藤さんがどこまでボールを見ていたのか、どこで目を離したかといった視線のデータがパソコンに送られた。またほかの機器も並行して使用し、スイングの動き、角度、頭や腰の位置などを画面で確認することができた。
菊池自身が実際に使った機器を導入
今回、K.O.H.に導入された様々な機器は菊池雄星投手が実際に使い、その効果を肌で感じたものばかりだが、伊藤さんが『アイトラッカー』の導入に至った経緯を教えてくれた。
「2022年のことですが、雄星さんの投球フォームを確認するために僕が打席に入った時に、雄星さんの視線が左打者の左上を向いているような気がして、『もう少し視線を真っ直ぐ向けてください』と伝えたら、真っ直ぐ見ていると返答されたんです。つまり本人はズレがあると認識していなかったんですね。でも実際、投げた後のフォロースルーが一塁側に流れてしまいフォームに安定感はありませんでした」
伊藤トレーナーは視線の動き(頭の位置)を直すことで、フォーム改善、そしてパフォーマンス向上に繋がるのではないかと考えた。そこで2022年オフの冬季練習で菊池は『アイトラッカー』を着けて投球し、自らの視線にズレがあることを認識し、そこからフォーム改良に着手して、好結果に結びつけている。
「こちら側が一方的に『ズレているので直しましょう』と選手に言っても選手本人がそう感じていなければフォームなどを直すことはできないんです。データがはっきりと数値化されることで、選手もズレがあることを認識できる。そこから一緒にフォームの改良や改善などに着手できるんです」と伊藤さん。
上記に加えて、K.O.H.のブルペンやバッティングレーンにはメジャーやプロ野球の各球団でも導入している『トラックマン』や『ラプソード』などピッチング・バッティングデータの測定・分析用トラッキングシステム、ハイスピードカメラが設置され、選手の動作やパフォーマンスの分析を行っていく。