熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「クボもソシエダ移籍できたから御の字」「日本人だと、Jで活躍しても…」ブラジル敏腕代理人が“久保建英らの移籍ウラ事情”を明かす
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/08/01 20:02
今季からレアル・ソシエダの一員となった久保建英。彼にはどんな未来が待っているのか
「あのマドリーが獲得した選手、というお墨付きがあるから他クラブが期限付き移籍のオファーを出した、という面があるはずだ。日本人選手の場合、Jリーグで活躍しても欧州のクラブから有償のオファーを勝ち取るのは容易ではない」
――ビニシウス、ロドリゴのケースが好例ですが、ブラジルリーグで活躍した選手に好条件のオファーが舞い込み、欧州クラブ間で争奪戦となることが少なくない。
「それは、日本とブラジルではフットボールの伝統、実績、リーグへの評価が全く異なるからだ」
古橋のような高額移籍金のケースはまだまだ少ない
――確かに一度、欧州へ渡って中小クラブで実績を残してから相当額の移籍金で転売された選手はいますが、日本のクラブから直接、欧州クラブへ高額の移籍金で移った選手はほとんどいません。
「最近では、古橋亨梧がヴィッセル神戸からセルティック(スコットランド)へ540万ユーロ(約7億5000万円)の移籍金で入団したと言われている。これは、日本人選手の移籍金としては非常に高い。しかし、このような例は、まだまだ少ない。有望な若手や日本代表クラスの選手でも、100万ユーロ(約1億4000万円)とか200万ユーロ(約2億8000万円)程度の移籍金で買われていくことが多い。これは、欧州の中堅以上のクラブにとってははした金だ」
――では総合的に考えて、久保がいきなりマドリーと契約したことは間違いではないと?
「決して間違いではない。また、本人と代理人は、移籍金がない方が欧州へ行きやすいと考えたのだろう」
価値を示すためには、やはりW杯
――レアル・マドリーにしてみれば、無償で獲得し、期限付き移籍の度に移籍料を受け取り、しかも今、移籍金650万ユーロ(約9億円)を手にしたわけですから、久保を獲得したことはビジネスとしては大正解だった、ということでしょうか?
「その通り。そして、久保もレアル・ソシエダという中堅クラブへ移籍できたわけだから御の字だろう」
――とはいえ、欧州や南米で自国の代表クラスの選手を無償で渡すようなクラブはほとんど存在しません。いつになったら、Jリーグのクラブは選手を他クラブへ送り出す際に適正な移籍金を受け取り、それを強化に回すことができるようになるのでしょうか?
「最もわかりやすいのは、日本代表がワールドカップで躍進して日本のフットボールのレベルが高いことを証明し、選手も世界の舞台で強豪国の選手と互角以上に渡り合う姿を示したときだろうね。残念ながら、現在のところ、日本やアジアでどれだけ活躍しても、欧州のクラブから好条件のオファーを受けるのは容易ではないんだ」