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「クボもソシエダ移籍できたから御の字」「日本人だと、Jで活躍しても…」ブラジル敏腕代理人が“久保建英らの移籍ウラ事情”を明かす
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/08/01 20:02
今季からレアル・ソシエダの一員となった久保建英。彼にはどんな未来が待っているのか
「デコ(ブラジル出身でポルト、バルセロナで大活躍し、国籍を取得してポルトガル代表でも活躍したMF)が似たケースだな。
19歳でポルトガルの名門ベンフィカへ移籍したが、すぐにポルトガルの小クラブへ貸し出された。そこでまずまずだったんだけど、ベンフィカは戦力とは考えなかった。ところが、ベンフィカの宿敵ポルトが目を付けて買い取った。そして、ポルトでジョゼ・モウリーニョ監督の指導を受けて欧州CLで優勝し、バルセロナへ移籍。ここでも欧州CLで優勝して世界トップレベルのMFとなった。
ただ、デコはポルトガルの小クラブからのし上がるのに超人的な努力をした。モウリーニョと出会った幸運もあった。本人の努力に運も重ならないと、一度ステップダウンしてからまたステップアップするのは極めて難しい。やはり、中小クラブで経験と実績を積んでからビッグクラブへ行った方がいいだろうね」
“いきなりレンタル”はモチベーションにかかわる?
――欧州ビッグクラブへ直行してすぐに中小クラブへ貸し出されるのと最初から中小クラブへ移籍するのと、現象としては同じですが、何か違いがあると思いますか?
「私はあると思うね。せっかくビッグクラブに入り、『これからスーパースターになるぞ』と張り切っていたのに、『君はここに居場所はない』と言われて、思いもしなかったクラブへ貸し出される。面白いわけがない。モチベーションが下がっても仕方がない。
また、移籍先のクラブ、地元メディア、サポーターは、生え抜きの選手、あるいは完全移籍した選手ならクラブの資産だから大事にする。でも、ビッグクラブから降りてきた選手は、『どうせ腰掛けだろう。ここを踏み台にすることしか考えていない』と思われかねない。
また、中小クラブは守備的な戦術をとるチームが多いから、攻撃の選手は能力を発揮しづらいことがある。このような多くのネガティブな事柄をすべて克服してビッグクラブから呼び戻してもらえるような抜群の成績を残すのは、いかに優れた選手であっても決して容易ではない」
まだまだJが強豪国並みの評価を受けるのは難しいが
久保建英は今頃、レアル・マドリーでビニシウスやロドリゴのようになれていたら理想的だっただろう。本人も日本のファンも、そのような姿を望んでいたのではないか。
しかし表にまとめたように、入団した時点で彼らとはスタートラインが異なっていた。無償や低額の移籍金で欧州のクラブへ入る場合、すでにその時点でハンディを背負っている。大多数の選手が高額の移籍金で入団している欧州ビッグクラブであればなおさらだ。
とはいえ、Jリーグでプレーする日本人選手が一朝一夕にフットボール強豪国の有力選手のような評価を受けるのは難しい。
Jリーグ創設から30年。この間、日本のフットボールのレベルは飛躍的に向上した。しかし、世界の強豪国は100年前後のプロリーグの歴史を持っている。その差は決して小さくない。
2050年までのW杯優勝を目標に掲げる日本がやるべきことはまだまだ多い。
<#1、#2からつづく>