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「きつねダンス」ブームの一方で“唯一の勝率3割台”日本ハム 新庄ビッグボスと“5つの不思議な現象、時おり天才的な采配”とは
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2022/06/28 11:01
苦戦が続くBIGBOSSこと新庄監督と日本ハム。数字で見ると“不思議な現象”が多い
選手数は79人だから4分の3弱の選手が一軍に出場したことになる。若手選手にはいい話かもしれないが、その結果として、レギュラーが固定できていない。
2)規定打席以上の選手数が最少タイ
<規定打席以上の選手数>
6人 ソフトバンク
5人 ヤクルト、巨人、広島、中日、阪神、ロッテ
4人 楽天
3人 オリックス、西武
2人 DeNA、日本ハム
“強いチームはレギュラーが固定されている”という説を反映している。DeNAの2人は佐野恵太と牧秀悟と主力級で、レギュラー級に故障が続きメンバーが固定できない側面もあった、日本ハムの2人は、過去に一度しか規定打席に到達していない松本剛と、初到達の野村佑希。まさに「新庄チルドレン」ともいうべき存在だ。他にも昨年は一軍出場がなかった清宮幸太郎や万波中正などの出場機会が増えている。
新たなチームカラーができつつある、と言えないこともない。とはいえ松本は1番から8番まで、野村も1番から6番まで、清宮は2番から7番まで、万波に至っては1番から9番までの打順でスタメン出場している。要するに「打線」という概念がなくなっている。
3)本塁打リーグ1位だが……
日本ハム56本、西武54本、ソフトバンク46本、楽天42本、ロッテ38本、オリックス29本。
アルカンタラ10本、万波10本、清宮7本が上位3人である。ただし打点で見ると、パでは現時点での打点王・山川穂高の48打点を筆頭に30打点以上が8人いる。日本ハムは万波の29打点が最多。アルカンタラ19打点、清宮17打点。本塁打が効率的に得点に結びついていない。
特に万波は規定打席未達ながらリーグ4位の64三振、四球はわずか4。打つボールを選ばず三振か本塁打かの「フリースインガー」と化している。“自由に打ってよろしい”と言われて、各選手がそのまま打っている印象を受ける。
4)「勝利の方程式」が成立せず
<パ・救援投手成績>
西武11勝7敗 22S 52H 率1.55
ソフトバンク15勝11敗 18S 54H 率2.56
楽天12勝5敗 19S 48H 率2.45
オリックス10勝12敗 22S 58H 率2.93
ロッテ8勝12敗 20S 71H 率3.56
日本ハム7勝14敗 9S 39H 率3.87
グラウンド内にブルペンがある球場で見ていると、各チームは救援投手の起用に細心の注意を払っていることが分かる。セットアッパーやクローザーは試合開始直後から準備を始める。1点が入っただけでブルペン投手が替わることもある。「勝利の方程式」は単なる比喩ではなく、それくらいの精度が求められている。
しかし新庄日本ハムは、開幕投手を務めた北山亘基がクローザーを務めるなど、投手の役割が固定されていない。投手が自分の持ち場を把握しきれずに投げている印象だ。