酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「きつねダンス」ブームの一方で“唯一の勝率3割台”日本ハム 新庄ビッグボスと“5つの不思議な現象、時おり天才的な采配”とは
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2022/06/28 11:01
苦戦が続くBIGBOSSこと新庄監督と日本ハム。数字で見ると“不思議な現象”が多い
このためにリードしても易々とひっくり返される試合が多くなっている。先発投手は上沢直之、加藤貴之、伊藤大海と柱が見えてきた。だが救援陣に関しては新庄監督が「勝利の方程式」を確立するまで、この状況は続くと思われる。
5)実績あるベテラン陣の苦悩
ホールド数史上最多の宮西尚生、沢村賞投手の金子千尋、ベストナインを経験した遊撃手の中島卓也、スーパーユーティリティの杉谷拳士らの出場機会が限られている。
新庄監督は「バリでボーっとしていたから」と、金子千尋の全盛期を見ていないと示唆した。実際にはオリックス時代の金子と一度対戦しているのだが――新庄監督はベテランにも忖度することなく新人を起用している。その方針は監督・球団それぞれではあるが、ベテランの戦力を活かしきれていないのは事実。実績的に最強のセットアッパーである宮西も力を発揮できていない。
前述した通り、新庄監督は前任者の実績を引き継いだり、他者の助言に耳を傾けることが少なく映る。明らかに結論が見えることも含めて、新庄監督自身が納得できるまで、試行錯誤が続くのではないか。
ただし筆者は、新庄監督の「天才」としか言えない采配もいくつか目にした。試合の最中に外野手のポジションを左翼から右翼、中堅から右翼と変えてみせるのだが、その直後に守備位置が変わった外野手にボールが飛ぶことがしばしばあった。新庄剛志にしか見えていない「世界」は確かにあるのだろう。しかしそれがすぐに白星に結び付くかは……なのだが。
春先からパの日本ハムはセの阪神とともに3割台の勝率で低迷してきた。しかし二人旅は阪神の浮上とともに終わる。戦力的に充実している阪神が浮上するのは当然としても、日本ハムは12球団で唯一勝率3割台だ。
日本ハムは「高い授業料」を払ってチームの大転換に取り組んでいる。それが今一つファンに受け入れられていないように見えるのがつらいところ。
観客動員1試合平均1万5289人は12球団最下位。札幌ドームは交流戦前まで入場制限をかけていたことが大きいにしても、それ以後も動員が3万人を超えた日はない。「きつねダンス」は好評でも、BIGBOSS采配が完全に支持されているとは言い難い。
新千歳空港から札幌へ向かう千歳線の車窓からは、新球場「エスコンフィールド北海道」の巨大な建物が姿を現している。来年、この球場では、どんな歓声が聞こえてくるのだろうか。
ヤクルト村上が「6試合5本塁打15打点」と凄まじい
<NPB第14週の成績 2022年6月20日~6月26日>
〇セ・リーグ
広島6試5勝0敗1分 率1.000
ヤクルト6試4勝2敗0分 率.667
阪神6試3勝2敗1分 率.600
DeNA6試2勝4敗0分 率.333
巨人6試2勝4敗0分 率.333
中日6試1勝5敗0分 率.167
リーグ戦再開後、3連敗だった広島が5勝1分と急回復した。ヤクルトも依然快調。一方で中日は1勝5敗と苦しんだ。
・個人打撃成績10傑 ※RCは安打、本塁打、盗塁、三振、四死球など打撃の総合指標
村上宗隆(ヤ)26打11安5本15点 率.423 RC9.79
ウォーカー(巨)28打13安3本4点 率.464 RC8.71
岡本和真(巨)24打10安2本10点 率.417 RC8.32
坂倉将吾(広)27打12安2本4点 率.444 RC7.99
オスナ(ヤ)18打9安2本4点 率.500 RC7.11
塩見泰隆(ヤ)23打10安1点 率.435 RC6.81
丸佳浩(巨)23打8安2本3点 率.348 RC6.70
近本光司(神)28打12安4点1盗 率.429 RC6.48
中村悠平(ヤ)17打7安2本10点 率.412 RC6.35
上本崇司(広)26打11安3点 率.423 RC6.07
2けた得点試合が5試合あるなど打撃戦が多かったために、高打率の選手が続出した。ヤクルトの村上は2試合連続2本塁打を含む5本塁打15打点と圧倒的な成績だった。巨人のウォーカー、岡本、丸も大暴れ。阪神の島田海吏が4盗塁をマーク。
・個人投手成績10傑 ※PRはリーグ防御率に基づく総合指標
高梨裕稔(ヤ)1登1勝9回 責0率0.00PR4.75
大瀬良大地(広)1登1勝9回 責0率0.00PR4.75
伊藤将司(神)1登1勝8回 責0率0.00PR4.22
小川泰弘(ヤ)1登9回 責1率1.00PR3.75
小笠原慎之介(中)1登8回 責1率1.135PR3.22
九里亜蓮(広)1登7回 責1率1.291428571429PR2.69
アンダーソン(広)1登5回 責0率0.00PR2.64
湯浅京己(神)4登1勝3 H3.2回 責0率0.00PR1.94
鍬原拓也(巨)4登2 H3.2回 責0率0.00PR1.94
大貫晋一(De)1登5.1回 責1率1.69PR1.81
ヤクルトの高梨と広島の大瀬良が完封勝利を挙げ、阪神の伊藤将は8回零封の好投だった。救援ではDeNAの山崎康晃が2セーブ。広島の森浦大輔が4ホールドを挙げた。