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落合博満は「圧勝で三冠王」を経験したが… 村上宗隆22歳「最年少三冠王」へのライバルは誰か〈王さんやノムさんはどうだった?〉
posted2022/06/27 17:10
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo News
「投高打低」と言われる今年のNPBだが、最近の村上宗隆はこの評価を覆すような勢いで打ちまくっている。
特に6月に入ってからの村上の活躍は神がかっている。
6月の成績は26日時点で71打数30安打11本塁打、28打点、打率.423。月間打率と本塁打はリーグ1位、打点は大山と1点差の2位、ヤクルト首位独走の原動力となっている。23日の中日戦と24日の巨人戦で記録した2試合連続2本塁打は凄まじいとしか言いようがない。
松井以来の「日本人50本塁打」、満塁弾記録更新も視野
今季通算では26本塁打、チームの消化試合は71。ちょうど折り返し点だが、このペースなら2002年の巨人、松井秀喜以来の「日本人選手50本塁打」も見えてくる。
また26本塁打のうち、満塁本塁打がすでに4本。グランドスラムのシーズン記録は1950年、中日の西沢道夫が記録した5本。村上はシーズン半ばであと1本に迫っている。
本塁打は巨人・岡本和真と6本差、打点は13点差。しかも、打率も.315でDeNA佐野恵太(.324)に9厘差の2位、そろそろ「三冠王」という表現も見え隠れし始めた。
ただ、メディアが「三冠王」と報じ始めると、当該選手の成績が下落するというジンクスがある。5月もDeNAの牧秀悟が絶好調で「三冠王」の言葉がメディアに躍ったが、6月に入って打率2割そこそこと勢いが止まってしまった。
そういう懸念があるにしても――やはり村上の「三冠王」の可能性について触れざるを得ないだろう。
三冠王はショートシーズンだった1938年秋の巨人・中島治康をはじめとして7人が11回記録している。彼らの成績を見ていくと「三冠王」を獲るには2つの注目すべきポイントがあることが分かる。
“数字が変動する打率”ゆえに難しい「首位打者」
1つ目は「首位打者」だ。
三冠王とは、打率、本塁打、打点の3つの打撃タイトルを同一シーズンに1人で獲得することだが、本塁打と打点は相関関係が強い。本塁打を打てば、最低でも打点1がつく。三冠王を狙うような打者は前に走者がいる確率が高い3番、4番を打つことが多いので、本塁打に絡む打点は多い。
そして本塁打、打点は「減らない」記録である。調子を落としたとしても、今まで積み上げた記録は残っていく。それもあって、本塁打と打点の二冠王は過去に67回も記録されている。王貞治は9回、野村克也は5回も本塁打、打点の二冠王になっている。
しかし首位打者と本塁打王は過去に10回、首位打者と打点王は11回記録されただけ。つまり本塁打王、打点王を取る能力と、首位打者を取る能力は別個といえる。
王、落合、野村はどう進化して三冠王を獲得した?
もちろん、この2つの能力を兼ね備えた打者もいる。