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「就活も一番強そう」東大野球部の“超エリート”でも就職氷河期は苦しんだ?「1位は三菱商事、ANA」東大野球部の就職先ランキング《02年~11年編》
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2022/06/11 11:02
東大野球部時代の松家卓弘(左、2004年撮影)。04年ドラフト9巡目でベイスターズ入り。右は捕手の升岡大輔。この松家らの世代を含む「02年~11年」の東大野球部エリートたちの就職先ランキングを調査した
その後、日本経済は徐々に回復傾向にあったが、08年9月には米投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけとした世界的な不況とともに再び悪化していく。同年10月には、リーマンショックのあおりを受けた飲食店・宿泊業、製造業、不動産業を中心に内定取り消しが起こり、社会的な問題にもなった。
こうした世相のなか、この10年間における東大野球部の進路で最も多いのは在学(留年)だ。132人中47人が留年しており、実に全体の36%を占めた。就職者の比率33%を上回っているのはヒドい話のように思える。だが、ここまで突出した数字はそのまま受け取れない。おそらく就職できないのではなく、将来のキャリア形成を見越した積極的な理由が隠されている可能性もある。いずれこの年代の留年者に話を聞いてみる必要があるだろう。
銀行業界↘航空業界↗「三菱商事とは相性がいい」
一方、就職組の進路に目をやると、前記事(92年~01年)とは異なる様相を呈している。前回ダントツの1位だった銀行への入行者は激減し、トップに航空会社がおどり出る。00年代の航空業界と言えば、01年のアメリカ同時多発テロや03年のSARS蔓延などにより、航空需要の激減にあえいでいた時期だ。さらに、10年には日本航空が経営破綻している。比較的苦しい時期であった航空業界への就職が多いのは、興味深い点である。
ちなみに、全日本空輸に進んだ山之井哲(捕手・07年卒)と日本航空に進んだ升岡大輔(内野手・07年卒)はともにパイロット採用だ。これは、00年に初めて東大野球部から日本航空にパイロットとして入社した須貝謙司の影響が大きそうだ。
空運に次ぐのは、商社と放送業界。商社では三菱商事への入社が4人と大半を占めた。この期間と次の期間(12年~22年)でも三菱商事に進む者は多く、東大野球部と三菱商事の相性は非常にいいようだ。主将を務めた山田聡(捕手・08年卒)も卒業後に三菱商事へ進んだひとり。のちにMBA留学やカーライル・グループを経て、現在は株式会社10Xの取締役CFOを務めている。
電通は「6人→1人」、銀行は「14人→5人」
放送業界では、前回記事でも触れたようにNHKが人気。3人が入局しており、そのうち02年の井出庸生(主将・内野手)は、記者として約8年活躍した後に政治家に転身した。三木武夫内閣の官房長官を務めた祖父や、村山富市内閣で厚生相を務めた伯父の地盤がある長野県での出馬だったが、当初は苦杯をなめた。みんなの党を皮切りに、民進党などの複数の政党を渡り歩きながら、衆院選で連続4回の当選を重ねた粘り腰の自民党若手代議士だ。