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「好きで始めたバレーボールが」“高2夏に代表デビュー”の逸材が選んだ意外な進路…アメリカ帰りの宮部藍梨(23)が7年ぶりの代表復帰
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJamie Schwaberow/NCAA Photos via Getty Images
posted2022/06/10 17:00
名将マッカーチョン監督率いる強豪ミネソタ大でプレーする宮部藍梨(2019年)
高校卒業後にアメリカの大学への進学を選んだ際、家族や友人など応援してくれる人もいたが、反対する声も聞こえてきた。
「いろいろ言われて心が折れた時もありました。でも結局、周りに何を言われても、行動に移すのは自分。人に『こうしなさい』って言われてやったことって、苦しい時に頑張れないじゃないですか。アメリカでは、楽じゃないことのほうが多かったですけど、自分で決めたことだから最後まで頑張れた。あの時、『ここで行かへんかったら絶対に後悔する。行って後悔したほうがましや』と思ったので、行きました」
レールに乗ることなく、他の選手たちとは違う道を選択した自分は、もう代表に呼ばれることはないだろうと覚悟した。
だが今年、7年ぶりに代表に復帰。「気持ちの準備ができてなかった」と苦笑するが、先に合宿に参加していた3歳下の妹・愛芽世(東海大3年)の存在が助けになった。
「一緒にやるのは初めてなんですけど、合宿に合流した時は、『いてくれて心強いな』とすごく思いました」
今季はヴィクトリーナ姫路でプレー
日本代表は5月31日から始まったネーションズリーグで4戦全勝という好スタートを切った。宮部藍は遅れて合宿に合流したこともあり第1週目のアメリカラウンドのメンバーから外れたが、途中から招集される可能性もある。
5月30日には、Vリーグのヴィクトリーナ姫路への加入が発表された。
海外のチームからのオファーもあったが、「プロとしての1年目は、自分の原点で」と、出身地・兵庫県のプロチームを選んだ。
かつてアンダーカテゴリーの日本代表監督を務め、今季、姫路の監督に就任した安保澄は、宮部の変化についてこう語る。
「アメリカで成長したところはたくさんある。高いブロックに対してスパイクを決めるためにいろいろなことを変えてきたというのがうかがえるし、ジャンプの仕方、アームスイングの仕方など、非常に伸びやかでしなやかなフォームになった。サーブレシーブもかなり上手になっています」
何より強調したのが「考え方の部分。非常に論理的に、物事を説明でき、行動を選択できるようになっている」ということだった。
それはインタビューしていても感じたことだった。
高校生の頃から宮部は、自分のプレーを冷静に分析し、親しみやすい関西弁でハキハキと話してくれる選手だったが、今はさらに理路整然と、プレーだけでなく自分の思いや考え方についてもストレートに伝えてくれる。“しっかりと自分を持った選手”という印象だ。まだ23歳だが、5年間、自分で決断し、道を拓いてきたたくましさが、目力や言葉から伝わってくる。
6年ぶりに代表で指揮を執る眞鍋監督のもと、新戦力も多く加わり、新たなカラーを作り上げていく日本代表に、独自の経験を経た宮部が溶け込んだら、どんな色に変化するのか。その融合を見てみたい。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。