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アメリカ銃乱射事件「いつになったら、手を打つんだ?」NBA名将が異例の“激怒会見”…18歳の頃、父を銃撃事件で亡くした過去
posted2022/06/07 17:00
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
AP/AFLO
「一体いつになったら、何か手を打つんだ?」
ゴールデンステイト・ウォリアーズのヘッドコーチ、スティーブ・カーは声を荒げてそう言い、怒りと悲しみにゆがんだ表情で拳を机に叩きつけた。
5月24日、NBAプレイオフのウェスタン・カンファレンス決勝第4戦の試合開始まで2時間を切っていた。いつもなら試合に向けてのチーム状況や意気込みなどを語る試合前会見でのこと。しかし、彼が怒りをあらわにした相手は記者でも選手でもなく、話していたことは試合のことでもなかった。
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この数時間前、テキサス州ユバルディの小学校で銃乱射事件が起き、児童と教師、合計21人が殺害されていた。その10日前にはニューヨーク州バッファローのスーパーマーケットで起きた銃乱射事件で10人が殺害されたばかりだった。バッファローの事件の翌日にはカリフォルニア州ラグナウッズの教会でも銃乱射があり、1人が死亡、5人が重軽傷を負っていた。
悲しいことに、アメリカでは銃によるこういった事件は珍しいことではない。カーHCも、これまでに数えきれないほど試合前に銃暴力の被害者のための黙とうを捧げてきた。何度黙とうしても、事件は減るところか増えているようにすら感じる。
それなのに、事件を減らすために必要な銃購入の身元確認を厳格化する法案すら成立の見通しがたっていない。共和党の上院議員たちが反対しているからだ。カーHCが怒りを爆発させたのは銃暴力の対策を進めようとしない政治家たちに対して、そして、問題がわかっていながら解決できないアメリカの悲しい状況に対してだった。銃規制法案に反対する共和党の有力議員たちの名前をあげ、「礼拝者たちやお年寄り、そして子どもたちの命よりも、自分たちの権力を維持することを優先するのですか?」と問いかけた。