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アメリカ銃乱射事件「いつになったら、手を打つんだ?」NBA名将が異例の“激怒会見”…18歳の頃、父を銃撃事件で亡くした過去
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byAP/AFLO
posted2022/06/07 17:00
プレイオフ進出を懸けた試合前の会見で、異例のコメントを述べたスティーブ・カーHC(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)
父から与えられたのは、NBA選手としてのキャリアだけではない。政治学を研究していた父が、フランスやエジプトの大学で数年間働いていたおかげで、家族と共に異国での生活をすることができた。そのことで、自分とは違う価値観や文化を受け入れる下地ができた。他人の思いを理解しようとする共感力も培われた。父が同僚や知人たちと政治や社会の話をしているのを聞きながら、世界情勢への理解を深めていった。
そういった人間性や知識は、選手時代に脇役選手としてチームメイトの信頼を勝ち取ることや、ヘッドコーチとなった今、チームをまとめるうえでも強みになっている。
現役時代にシカゴ・ブルズとサンアントニオ・スパーズで計5回のNBA優勝に貢献し、ウォリアーズのヘッドコーチになってから、チームを7シーズンで5回のNBAファイナルに導き、これまでに3回のNBA優勝を果たしたのも、そして今、4回目のNBA優勝を目指してNBAファイナルの戦いができているのも、父から受け継ぎ、教わったことのおかげだった。
「18年間、父がいたことに感謝している」
7年前、ウォリアーズのヘッドコーチになって1シーズン目に、地元紙、マーキュリー・ニュースの取材を受けたカーは、子供のころに海外で生活したことや、父の影響についてこう語っている。
「子供のときにエジプトで暮らして、貧困を見てきたことで、同情心を培ってきました。食卓を囲んで世界の政治の話をすることで、自分たちがどれだけ好運かを理解するようになりました。その経験によって、人生についてつり合いの取れた見方を身につけてくることができたのだと思います。そういったことが、選手時代にはチームメイトとして、そして今ではコーチとして、人を理解することに役立っています」
同じインタビューで、カーはこうも語っている。
「18年間、父がいたことに感謝しています。人生において、今でも毎日のように父の影響を感じています」