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マラソン界の危機を救う“ギャンブル化”は暴論か?「スポーツを堕落させる」の声も、大迫傑への“報奨金2億円”が示す可能性

posted2022/04/18 17:00

 
マラソン界の危機を救う“ギャンブル化”は暴論か?「スポーツを堕落させる」の声も、大迫傑への“報奨金2億円”が示す可能性<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

2020年の東京マラソンで2度目の日本新記録をマークした大迫傑。2018年のシカゴマラソンに続き、日本実業団競技連合の報奨金1億円を獲得した

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長浦京

長浦京Kyo Nagaura

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Nanae Suzuki

大学駅伝の人気やランニングブーム、多くの有力選手の活躍によって盛り上がりを見せる日本の中長距離陸上競技界。その一方で、1946年に創立したびわ湖毎日マラソンが2022年より大阪マラソンに統合され、福岡国際マラソンも2021年の第75回大会をもって廃止(その後、後継大会の開催が発表)となるなど、多くの大会が財政面での課題に直面しています。厳しい資金繰りや「大会の一極化」という現実を乗り越えるための妙案はあるのか。マラソンの“ギャンブル化”の可能性を説いた雑誌『Number Do』の記事を特別に無料公開します。<初出:Sports Graphic Number Do 2022 vol.40(2022年3月29日発売)、肩書などすべて当時>

 びわ湖毎日マラソン、福岡国際マラソン。

 国内でも有数の知名度と伝統を誇った大会だが、びわ湖は2021年をもって単独開催を終了し、大阪マラソンと統合された。福岡も去年12月のレースを最後に終了が決まっていたが、一転、今年3月に運営体制を刷新しての後継大会開催が発表された。

 ナイキなど各種スポーツメーカーが相次いで発表した新型ランニングシューズ導入による記録の飛躍的向上。2018年以降、大迫傑を筆頭に、鈴木健吾、設楽悠太、女子トラックの田中希実など、相次ぐ有力選手の登場。大学駅伝の根強い人気。第二次ランニングブームといわれる一般ランナーの増加。

 これらを背景に、国内の中長距離競技界は安定的に成長しているかに見えて、実際は財政面での課題に直面している。

地方都市のレースが直面する困難とは

 そう気づかされたのは、今年2月に発売された『アキレウスの背中』という単行本の制作を通してだった。

 日本初の公営ギャンブル対象レースとなった国際マラソン大会。その妨害を企むテロリストと警察との攻防に、各国スポーツメーカーのランニング・ギアの開発競争を絡めた作品で、執筆に際して大会運営の実情を知るため、複数の陸上競技チーム監督やマラソン大会運営経験者にお話を聞かせていただいた。

長浦京『アキレウスの背中』(文藝春秋)※書影をクリックするとAmazonのリンクにジャンプします長浦京『アキレウスの背中』(文藝春秋)※書影をクリックするとAmazonのリンクにジャンプします

 それらの方々の多くが口にしたのが、「大会の一極化」という言葉だった。

 東京マラソンは、アジア有数のハブ空港の近くでレースが行われ、なおかつ平坦な高速コースのため好記録が出る可能性が高く、世界のトップランナーが集まる条件が揃っている。東京という場所の知名度やレース規模から、高い宣伝効果が見込まれ、後援企業も集まりやすい。一般市民ランナーにしても、スタート前・ゴール後の鉄道での移動が容易なため、自宅からでも気軽に参加できる。地方からの参加者のための宿泊施設も豊富にある。

【次ページ】 “ギャンブル化”のアイデアにマラソン関係者の反応は…

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