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マラソン界の危機を救う“ギャンブル化”は暴論か?「スポーツを堕落させる」の声も、大迫傑への“報奨金2億円”が示す可能性
posted2022/04/18 17:00
text by
長浦京Kyo Nagaura
photograph by
Nanae Suzuki
びわ湖毎日マラソン、福岡国際マラソン。
国内でも有数の知名度と伝統を誇った大会だが、びわ湖は2021年をもって単独開催を終了し、大阪マラソンと統合された。福岡も去年12月のレースを最後に終了が決まっていたが、一転、今年3月に運営体制を刷新しての後継大会開催が発表された。
ナイキなど各種スポーツメーカーが相次いで発表した新型ランニングシューズ導入による記録の飛躍的向上。2018年以降、大迫傑を筆頭に、鈴木健吾、設楽悠太、女子トラックの田中希実など、相次ぐ有力選手の登場。大学駅伝の根強い人気。第二次ランニングブームといわれる一般ランナーの増加。
これらを背景に、国内の中長距離競技界は安定的に成長しているかに見えて、実際は財政面での課題に直面している。
地方都市のレースが直面する困難とは
そう気づかされたのは、今年2月に発売された『アキレウスの背中』という単行本の制作を通してだった。
日本初の公営ギャンブル対象レースとなった国際マラソン大会。その妨害を企むテロリストと警察との攻防に、各国スポーツメーカーのランニング・ギアの開発競争を絡めた作品で、執筆に際して大会運営の実情を知るため、複数の陸上競技チーム監督やマラソン大会運営経験者にお話を聞かせていただいた。
それらの方々の多くが口にしたのが、「大会の一極化」という言葉だった。
東京マラソンは、アジア有数のハブ空港の近くでレースが行われ、なおかつ平坦な高速コースのため好記録が出る可能性が高く、世界のトップランナーが集まる条件が揃っている。東京という場所の知名度やレース規模から、高い宣伝効果が見込まれ、後援企業も集まりやすい。一般市民ランナーにしても、スタート前・ゴール後の鉄道での移動が容易なため、自宅からでも気軽に参加できる。地方からの参加者のための宿泊施設も豊富にある。