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ボール支配率は驚異の70%超… 中村憲剛が語るスペイン攻略&GL突破のポイント「本音では自分たちが勝ち上がると思っているはず」<W杯対戦国>
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2022/04/06 17:03
スペイン代表のルイス・エンリケ監督。ドイツ代表のハンジ・フリック監督と同様に、チャンピオンズリーグでの優勝経験を持つ名将だ
カウンターを繰り出すためには、両ウイングをどこまで戻すかがポイントになるでしょう。言い方を変えると、彼らをどれだけ前に残せるか。自陣深くまで下げさせられるとワントップしか前に残らないので、カウンターは出しにくくなります。守備をしながらできるだけ高い位置を取らせたいのです。
前半は守りに軸足を置いた選手起用で得点を許さず、スペインが攻め疲れをしたところで交代選手を入れる、という戦略も考えられます。伊東純也や三笘薫のようなスピードと突破力を持った選手、ひとりでやり切れる選手は、ワンプレーで流れを変えられます。彼らの存在は、日本の強みになり得るでしょう。
MF陣の“キャパ超え”にチームとして対処できるか
アジア最終予選の日本は、ボールを握ることができていました。相手を見ながら攻め筋を変えていくことで、自分たちの有利な展開へ持っていくことができました。
しかしスペイン戦やドイツ戦は、相手に握られる時間が長くなることが予想されます。秒単位で動いていく展開を、ピッチに立つ一人ひとりはもちろんグループで、ユニットで、見極めながら戦わなければならない。選択の連続を強いられ、ひとつの選択を誤ると致命的なことになってしまう。試合中に相手をよく見て、相手の攻め筋を読んで、かつフィジカルも技量もある「個」に対応していかなければならない。この作業は、かなりハードなタスクになるでしょう。
自分たちの判断で、試合中に守り方を変えられるか。そのための方向付けをしていくのは、ポジション的にも3人のMFになるでしょう。ここまでのチームの作りから言えば、遠藤航、守田英正、田中碧の担当になると思います。
最終予選では、彼らの想像を超えること、3人がパニックに陥ることはほとんどなかったと思います。しかし、スペインの選手たちは、およそあらゆる状況に対応できます。「こうなったらこうだな」という解を持っていて、攻め筋をその都度変えてきます。
彼ら3人が相手の出方を見たうえで対応するまえにスペインに先を越され、さらに違う対応を迫られる、といった状況が起こるかもしれません。予選ではほとんどなかった「彼らのキャパシティを超えるようなこと」が起きたときに、チームとしてどう対処できるのかがポイントになるのでしょう。
アジア予選では必要のなかった対策を打つ場面も出てくるので、これまでより多くの答えを持っておけるか。ピッチに立つ選手だけでなく、森保監督の試合中の仕事量も増えるでしょう。試合の展開にもよりますが、臨機応変な戦術の変化や思い切った選手交代で、自分たち主導で試合を動かしていけるようにできるか。
日本にとっては良くも悪くも「今日はすごいことになっている」ということが起こるはずです。「すごくうまくいっている」のなら、その時間をいかに伸ばせるか。「すごくうまくいっていない」のなら、できる限り早く修正できるか。スペイン戦もドイツ戦も、かつてないほど修正能力が問われる戦いになることは間違いありません。